-放課後-

「すみません。足を挫いてしまって、しばらくは練習を見学させてください」

「いいよ。端の方で休んでて」

「ありがとうございます」

私は先輩にそう言って、体育館の端で椅子に座ってドリブル練習をすることになった。体力には自信があったので、後はハンドリングとシュートだな、と思っていたので絶好のチャンスだと思い練習に励んだ。



「ねえ、また水鈴休んでる」

「ほんとだ。本当に痛いのかな」

「さあ」

また、そんな噂が広まった。私が見学していたこともあり、水鈴と私は同じように言われるようになった。

「弧深もさ、授業行くとき普通に歩いてるらしいよ」

「え、まじ!? じゃあ、ただの仮病? サイテーだわ」

こんなことを聞くたびに、私は知らんぷりして、練習をした。
事実じゃないことに、怒っても仕方ない。それに、同級生のただの嫌味じゃないか!

だが、そう思ったのもつかの間、その噂は先輩たち8人にも広まっていた。
元々、先輩・後輩としての付き合いは苦手で、先輩に対してハッキリと自分の意見を伝えられないのが、私に悪いところだった。

「弧深ちゃん、ちょっと社体の後に来てくれる?」

悪い予感がしていた。同級生が、こっちを見て笑っていたのだ。何が面白いのかと、やっぱりすることが子供だなと、そう思わざるを得なかった。


-社体の帰り-


「あのさ、弧深ちゃん。あなた、足を挫いて松葉杖してるのよね? 何で、学校では普通に歩いてるらしいじゃない?」

「そ、それは……」

「あら、來ちゃんの言う通りね。足、怪我は軽いんでしょう? やりたくないからこんなことをしてる。違う? そんなね! 誰だってキツイ練習はやりたくないのよ! でも皆、痛い所があってもやってるの! 一人だけ、休んで貰っちゃ、困るのよ!!」

「……」

「明日から、ちゃんとやってね」

思った通りだ。思った通り。あの先輩は松葉杖をついたことがないのに、何を言えるのだろう。以外と面倒臭いのだ。歩く分には問題ないと言われた。松葉杖は、移動が困難なときに使えと。なのに、なのに、なのに‼
……これで言われた通りに練習を再開してしまったら、また悪化する。そんなことを続けていたら、一生治らなくなってしまう。
頭が悪いのか? 自分の事だけじゃなくて、人の事を理解しない奴が、そういうことを言うんだ。あぁ、そう言う奴らばっかりなんだ。
前から、本当は分かっていたのかもしれない。でも、きっと信じたくなかったんだ。



そう言う奴が、沢山いる。