「おはよー! あれ? 弧深? なんかボーッとしてる?」

「え? あ、ううん。大丈夫。ちょっと委員会が心配で」

「弧深なら大丈夫だよ! いつもの笑顔で、ね!」


始まりは、1年生の夏だった。まだ何も知識がなかった私は、楽しそうだな。と言う思いだけで、バスケットボール部に入った。それが、まさか最悪な選択だったことをまだ知らなかった。


-1年生 5月ゴールデンウィーク-


「先輩! こっちです!」

「よろしく! (らい)!」

スパンっ

「ナイシュー! ナイシュ、來!」

凄いなぁ、やっぱりミニバスやってた來たちは違うなぁ。そんなことを思う私がいた。

「ねえ、やっぱり1年生で試合に出れるって凄いよね!」

最近、やたらと病欠が多い水鈴が話しかけてきた。だけど私はそこまで気にしてはいなかった。

「そうだね。私なんか、まだシュート入らないし」

「ナイシュー! 來!」

また入ったんだ。やっぱり凄い。そんなことを思っていた。
今は、ゴールデンウィーク中の夏の大会に向けての練習試合中。相手は、強い方でシュートは入るものの、全く歯が立たない状態。この学校は生徒数が少ない。部活にはいる人も早々いないのだ。だから、3年0人、2年8人、1年4人、計12人と言う少なさなのだ。

結局、その試合は我チームの敗退。
この弱さじゃあ、大会も初戦敗退。幸いなことに、今の2年生には2度のチャンスがある。今、本来大会に出るはずの3年がいないので、今年と来年の2回大会に出場できるのだ。
が、不幸なことに、コーチが悪かった。



-ゴールデンウィーク2週間後の火曜日の夜-


「集合!」

「「「はい!」」」

今日は、何をするんだろう? シュート練習かな。鬼ごっこかな。と、保育園児みたいにはしゃいでいた。
本来、この時間は社会体育といって、遊ぶ時間ではなく、辛い練習があるはずの時間なのだ。

「今日は、2年は3対3、1年は鬼ごっことシュート練習でもしておけ」

雑な説明だな。とも思いながら、先輩たちは練習を始めた。
そう、この社会体育のコーチ、最悪なのだ。私たちを勝たせたいのか、負けさせたいのか良く分からない。なんのためのコーチだったんだろう、と、今になって思うほど。それでも、その頃はそれで楽しかった。