そんな私にお構いなしに、宗田くんは続けて言葉を浴びせてくる。

「そろそろ俺のになりなよ。」

俺の、とか。
強引な物言いなのに、ドキリとする。

だけど私の気持ちは迷う。
頷いてしまったら、楽になるんだろうか。
それはただの甘えなんだろうか。
本当に私は宗田くんのことを心から好きだと言えるんだろうか。

だって私は一度不倫した身。
そんな私を好きでいてくれるとか、嘘でしょ?

私の気持ちを知ってか知らずか、宗田くんはさらりと言う。

「俺はずっと好きだけど?仁科の返事をずっと待ってるんだよね。だけどもう待つことはできない。仁科が可愛いことが皆にバレた。」
「バレたって…。」

疑問を口にすると、おもむろに黒ぶちメガネが外される。

「花見のとき、メガネ取っただろ?」

取ったけど、それは可憐ちゃんが勝手に取っただけであって、不可抗力だ。
それに、メガネを取ったくらいで何かが変わるわけではない。
変わるのは、こそこそ隠れていたい私の気持ちだけだ。