駅から程よく近い綺麗なマンションの一階が宗田くんの家だった。

もたもたと鍵を出すので、それを奪い取るようにして玄関の鍵を開ける。
宗田くんを中へ押しやると、重いドアが背中越しにパタンと閉まった。

「じゃあ私帰るから。ここで寝ちゃダメだよ。」
「…うん。」

「鍵、ちゃんと閉めてよ。」
「…うん。」

返事を聞いて、そっと外に出る。
一応ドアの前で耳を澄ませてみたけど、一向に鍵を閉める音が聞こえてこない。

そのまま寝てるとか、ないよね?
ここ一階だし、鍵閉めてくれないと不安なんですけど。

玄関の前でウロウロする私が一番の不審者になっている気がする。
もし防犯カメラでも付いてたら、挙動不審な姿が映っているだろう。

ああ、もうっ。

私はもう一度宗田くんちの玄関のドアを開けた。

そこには、さっきと何一つ変わっていない姿の宗田くんの姿があった。

「宗田くん、ここで寝たらダメだし、鍵も閉めないと不用心だよ。ほら、立って。」

座り込む宗田くんの左腕を持って立たせようとしたのに、何故だか私の視界がグラッと揺れた。

えっ?と思った瞬間に、私は宗田くんに捕らえられていた。