車内はほどよく混んでいて、私たちは扉の近くに立った。
混んでいるからこそ、宗田くんとの距離が近い。
先程のあれやこれやが頭の中を勝手にリピートするので、変に緊張してしまう。


綺麗だよ。
一緒にいたい。


そんなことを言われたら、宗田くんはまだ私のことを好きなんじゃないかって勘違いしてしまいそう。

「仁科…」

ふいに宗田くんが私の耳元に口を寄せるように名前を呼ぶ。

近い!
近いよ、宗田くん!
電車内で何をしようというの!

緊張が高まり急に心臓がドクンと大きく跳ね上がる。
混んでいる車内では距離を取ることは不可能だ。

次に宗田くんから出た言葉に、私は耳を疑った。

「気持ち悪い。」
「…は?」

宗田くんの顔を見ると青白くなっている。
私は慌てて窓から外を見た。
と同時に、まもなく駅に着くというアナウンスが流れる。

「ちょっと待って!駅もうすぐだから。あ、ほら、着くから。ほら、降りよう。」

宗田くんの腕を引っ張るようにして電車を降りる。
さっきまでの緊張が一気に吹き飛び、そんなことよりもこの人がちゃんと家まで帰れるのか心配になってきた。
何なの、もう。