「仁科、ちゃんと飲んでる?食べてる?」

いつの間にか戻ってきた宗田くんが、私を覗きこんで言う。
一応お菓子をちまちまと食べてましたよ。
しゃべる相手もいないのでね。

「仁科はさ、可愛いんだからもっと笑いなよ?」

宗田くんの言葉に、私は嬉しい気持ちと胸に刺さる気持ちが入り交じって、複雑な気分になった。

私だって笑えるなら笑いたいよ。
可憐ちゃんみたいに愛想よくなりたいし。

黒歴史である過去の恋愛が未だに私の心を蝕んでいて、何だか上手く笑えないんだ。

「そうですよ!真知さん眼鏡取るとめっちゃ可愛いんですよね。私、外したとこ見たことありますもん。黒ぶちメガネで隠しちゃって、もったいないです。」

男性陣に囲まれていた可憐ちゃんが、突然会話に加わってくる。

「そうなんだ。仁科さん、メガネ取ってみてよ。」

可憐ちゃんがこちらの会話に加わったことで、可憐ちゃんの取り巻きたちが一斉にこちらを見て言う。
今まで空気のような存在だった私が、一気に表舞台へ立たされた。

「えっ、嫌です。」

拒否したのに、ほろ酔いの可憐ちゃんにすっとメガネを外される。

「ほら、真知さん。」
「えっ、ちょっ、」

とたんに、恥ずかしさが込み上げてくる。
メガネで素顔を隠していたのに、何てことをしてくれるんだ。