会をしっかり保っての中りは。僕の意識の中に、今の一射がしっかりと刻まれる。
 しばらくの間、僕は残心の姿勢のまま動けなかった。
 込み上げてくるものがあったのか、目頭が熱くなっていく。
 そして、堪えきれなかった涙がゆっくりと頬を伝っていった。
 立の途中。大切な試合の合間なのに、目からは絶えず涙が溢れ出てくる。
「……やったよ……」
 嗚咽を漏らしつつ、弓倒しをする。
 パンッ。
「「ッシャアアアアアア!」」
 歓声が聞こえた。今日の歓声は、僕達のチームには上がることはない。
 全て一緒の立に入る他校への歓声。
 わかっていることなのに、何度も強く意識してしまう。
 岩月は本当に強い。鉄の塊のような強心臓を持っている。
 それでも僕達だって多くの困難を乗り越えてきた。
 今日に向けて練習してきたのだから、岩月のように中て続けることもできるはず。
 信じよう。今は皆の射を信じるしかない。
 目じりに溜まった涙を拭い、顔を正面に向ける。
 高瀬が会に入ったところだった。僕はそのまま物見を入れて、看的の方を見る。
 パンッ。
 的に中る音と同時に「○」と記された表示が目に映る。
 僕達のチームはまだ一つも外していなかった。
 二人とも必死に頑張っている。その思いがひしひしと伝わってくる。
 たった一本うまくいっただけで泣いてしまった自分に、恥ずかしさを覚えた。
 まだ試合は始まったばかり。ここから中て続けなければいけない。
 試合が進むにつれて、緊張感がさらに増してくる。二射目を終えた僕達は、まだ一人も外していなかった。チーム力の賜物と言ってもいいのかもしれない。僕達は確実に的に中てることができている。
 一方の岩月は、王者の風格漂う試合運びをしていた。
 橘の先手必勝から始まり、二射目を終えた僕達とは試合運びのスピードが桁違いだった。岩月は僕達が三射目に入る頃には、四射目に入ろうとしていた。
 岩月の三射目までの結果は直ぐにわかった。
 看的の表示に「○」以外の記号が見つからない。三人とも全て的中させていた。
 流石、全国常連校。対戦相手に対してのプレッシャーのかけ方を熟知している。
 先行して中て続けることで、後手に回った僕達は外すことが許されない状況に追い込まれる。
 心理を上手くついた戦術は、強豪チームならではだ。