「お前らの立は、ちょうど真ん中だな」
割り込んできたのは的場先生だった。僕と目が合うと、手を振ってきた。本当に友達みたいに気軽な先生だ。
「真ん中って。特に問題ないですよね?」
「まあな。ただ、一緒に立に入るチームがお前らの問題になるんじゃないか?」
「問題ですか?」
「お前らは、昨年のインハイ出場校にして埼玉県で一番のチーム、岩月Aチームと一緒の立だ」
にやりと笑みを浮かべる的場先生の発言に、心臓の鼓動が早くなる。
岩月Aチーム。その言葉を聞いただけで身震いした。一番のチームだからではない。僕にとって、公式戦で岩月Aチームと同時に試合をするのは特別だった。
岩月Aチームには橘がいる。戦力層の厚い岩月Aチームに今も入っている橘は、さらに強くなっているはず。
二月の練習試合の時、橘とは一度も話すことがなかった。試合が終わってから話そうと思っていたけど、橘とは結局会えず話すことすらできなかった。
でも、今日は必ず話せる。控室で隣に座るし、立の前後に橘を捕まえることができるはず。
「緊張はしてないみたいだな」
的場先生と視線が合う。そのまま僕の肩をポンッと叩いてくる。
「緊張は……少ししてます」
「ほう。珍しいじゃないか」
「でも、僕には心強い仲間がいるんで大丈夫です。」
高瀬と古林に視線を向ける。二人とも頷いて僕に応えてくれる。
「今日は男子弓道部復活の日ですから。真弓君も気合が入ってるんですよ」
「高瀬。お前は緊張感なさすぎだ。古林を見てみろ。いつも通り落ち着いてるだろ」
古林は僕達の会話を、腕組みしながら静観していた。
「古林君は、友達いないだけですから」
「おい、高瀬。お前何言ってるんだ。殴るぞ」
「冗談、冗談だって。真弓君どうにかしてよ」
今日は僕達にとって大切な日。それなのに、二人のやり取りはいつも通り変わらなかった。大切な日にいつも通りの関係を築けているのは、リラックスできている証拠だ。それに変に奇を衒うことがなく、ありのままの自分達を出せている。今の僕達は緊張で足元が浮ついている人とは違う。しっかりと地に足がついている。
今日の大会は忘れられない大会になる。そんな気がして仕方がなかった。
割り込んできたのは的場先生だった。僕と目が合うと、手を振ってきた。本当に友達みたいに気軽な先生だ。
「真ん中って。特に問題ないですよね?」
「まあな。ただ、一緒に立に入るチームがお前らの問題になるんじゃないか?」
「問題ですか?」
「お前らは、昨年のインハイ出場校にして埼玉県で一番のチーム、岩月Aチームと一緒の立だ」
にやりと笑みを浮かべる的場先生の発言に、心臓の鼓動が早くなる。
岩月Aチーム。その言葉を聞いただけで身震いした。一番のチームだからではない。僕にとって、公式戦で岩月Aチームと同時に試合をするのは特別だった。
岩月Aチームには橘がいる。戦力層の厚い岩月Aチームに今も入っている橘は、さらに強くなっているはず。
二月の練習試合の時、橘とは一度も話すことがなかった。試合が終わってから話そうと思っていたけど、橘とは結局会えず話すことすらできなかった。
でも、今日は必ず話せる。控室で隣に座るし、立の前後に橘を捕まえることができるはず。
「緊張はしてないみたいだな」
的場先生と視線が合う。そのまま僕の肩をポンッと叩いてくる。
「緊張は……少ししてます」
「ほう。珍しいじゃないか」
「でも、僕には心強い仲間がいるんで大丈夫です。」
高瀬と古林に視線を向ける。二人とも頷いて僕に応えてくれる。
「今日は男子弓道部復活の日ですから。真弓君も気合が入ってるんですよ」
「高瀬。お前は緊張感なさすぎだ。古林を見てみろ。いつも通り落ち着いてるだろ」
古林は僕達の会話を、腕組みしながら静観していた。
「古林君は、友達いないだけですから」
「おい、高瀬。お前何言ってるんだ。殴るぞ」
「冗談、冗談だって。真弓君どうにかしてよ」
今日は僕達にとって大切な日。それなのに、二人のやり取りはいつも通り変わらなかった。大切な日にいつも通りの関係を築けているのは、リラックスできている証拠だ。それに変に奇を衒うことがなく、ありのままの自分達を出せている。今の僕達は緊張で足元が浮ついている人とは違う。しっかりと地に足がついている。
今日の大会は忘れられない大会になる。そんな気がして仕方がなかった。