春休みになった。四月に行われる関東大会予選に向け、僕達はひたすら練習に励んでいる。
練習試合以降、男子弓道部はようやく女子と一緒に練習することを許された。道場に足を運ぶと、僕達のことを待っていたように、女子弓道部の人達が温かく迎えてくれた。以前は嫌われていた男子弓道部にとって、驚かずにはいられない出来事だった。
こうして道場で不便なく練習できるのも、今の環境を整えてくれた人がいたからだ。
女子弓道部部長の雨宮先輩。僕達のことをはじめから理解してくれて、味方になってくれた人。先輩には感謝してもしきれないくらいの恩がある。
「それじゃ、今日も立を組んで練習しましょう」
「「はい」」
雨宮先輩の声に、周囲の女子が声を揃えて返事を返す。
「関東大会に向けて新しいチームを組んだから、黒板を見てから立に入ってね」
雨宮先輩の声に反応した皆が、ぞろぞろと黒板の前に集まる。
「私、Bチームに上がってる!」
「Dチームか……」
「よしっ! Aチーム」
道場にある黒板には、部員の名前が書かれたマグネットが貼られている。三人一組で成績順にAチームからEチームに分けられていた。春休みの練習の間、このマグネットの位置が毎日変わる。そして、春休み最後の練習を終えた段階でのマグネットの位置が、四月の関東大会予選のチームとなる。
「俺達は女子の後だね」
「うん」
高瀬の笑みに僕は頷く。女子陣の後に、男子Aチームとして僕達の名前が書いてあった。
「ごめんね。男子のマグネット、まだ準備できてないんだ」
二年生の先輩と思われる人が、咄嗟に声をかけてくれた。僕達に気をつかってくれたのかもしれない。
「はい。マグネット、楽しみに待ってますね」
高瀬が笑みを浮かべ、先輩の配慮に応える。周囲にいた先輩達は、高瀬の爽やかな笑顔に頬を赤く染めていた。
僕は再度黒板を見る。僕達の名前は、マグネットではなくてチョークで書かれていた。それでも、道場の黒板にしっかりと名前が刻まれている。
翔兄ちゃんの練習していた道場で、ようやく男子弓道部が動きだす。
そう思うだけで、僕は十分満足できていた。
練習試合以降、男子弓道部はようやく女子と一緒に練習することを許された。道場に足を運ぶと、僕達のことを待っていたように、女子弓道部の人達が温かく迎えてくれた。以前は嫌われていた男子弓道部にとって、驚かずにはいられない出来事だった。
こうして道場で不便なく練習できるのも、今の環境を整えてくれた人がいたからだ。
女子弓道部部長の雨宮先輩。僕達のことをはじめから理解してくれて、味方になってくれた人。先輩には感謝してもしきれないくらいの恩がある。
「それじゃ、今日も立を組んで練習しましょう」
「「はい」」
雨宮先輩の声に、周囲の女子が声を揃えて返事を返す。
「関東大会に向けて新しいチームを組んだから、黒板を見てから立に入ってね」
雨宮先輩の声に反応した皆が、ぞろぞろと黒板の前に集まる。
「私、Bチームに上がってる!」
「Dチームか……」
「よしっ! Aチーム」
道場にある黒板には、部員の名前が書かれたマグネットが貼られている。三人一組で成績順にAチームからEチームに分けられていた。春休みの練習の間、このマグネットの位置が毎日変わる。そして、春休み最後の練習を終えた段階でのマグネットの位置が、四月の関東大会予選のチームとなる。
「俺達は女子の後だね」
「うん」
高瀬の笑みに僕は頷く。女子陣の後に、男子Aチームとして僕達の名前が書いてあった。
「ごめんね。男子のマグネット、まだ準備できてないんだ」
二年生の先輩と思われる人が、咄嗟に声をかけてくれた。僕達に気をつかってくれたのかもしれない。
「はい。マグネット、楽しみに待ってますね」
高瀬が笑みを浮かべ、先輩の配慮に応える。周囲にいた先輩達は、高瀬の爽やかな笑顔に頬を赤く染めていた。
僕は再度黒板を見る。僕達の名前は、マグネットではなくてチョークで書かれていた。それでも、道場の黒板にしっかりと名前が刻まれている。
翔兄ちゃんの練習していた道場で、ようやく男子弓道部が動きだす。
そう思うだけで、僕は十分満足できていた。