練習試合は無事に終わりを迎えた。結局、岩月が男女アベック優勝を勝ち取った。男子の一位は東武農業第三Aチームと同中だったため競射となった。結果、岩月Aチームが競り勝った。女子は草越Aチームが二位と大健闘。最後は雨宮先輩が皆中で締めて、二位という成績を納めた。
「それにしても、楓先輩の射、素敵だったね」
「うん、僕もそう思うよ」
帰り道。僕の隣で凛は笑顔を見せている。
「男子もよかったよね。藤宮先生の驚いた顔、私初めて見た」
「僕も初めて見た。まさか藤宮先生があそこまで豹変するとは思ってもみなかった」
男子弓道部を散々馬鹿にしていた藤宮先生は試合後、僕達に向け頭を下げてきた。そして、僕が中学時代に全国大会優勝したことがあることを、知らなかったと告げてきた。
「それに『これからは道場で私達の指導をして下さい』だもんね。藤宮先生もようやく一のすごさに気づいたって感じ」
「僕は……すごくないよ」
僕はすごくない。すごいのは高瀬や古林だ。僕は自分の力だけでは、今の場所を取り戻すことはできなかった。
「まーた暗くなるような発言して。今日くらい喜びなさいよ」
バシッと背中を叩いてきた凛は、いつもと変わらず元気に笑顔を咲かせていた。
ブーブー。
携帯が鳴った。ポケットから取り出して画面に表示された名前を見る。
「誰?」
「大前さん。休日に通ってた道場で、教えていた後輩」
「そうなんだ。早く出てあげなよ」
「うん。ゴメン」
凛に断りを入れ、電話に出た。
「もしもし」
『先輩。私です』
「こんばんは」
『先輩、今日の結果どうでしたか?』
「今日の結果?」
『とぼけても無駄ですよ。真矢先生から聞きました。今日の試合で上位に入らないと、先輩達が弓道をできないって』
心配させないために、大前にはずっと今日のことを隠してきた。
「ごめん。言ってなかったよね」
『全くです。何でも話してくれると思ってたのに』
ぶつくさと小言を呟く大前は、まるで今隣に居る凛みたいだ。
「無事に弓道できることになったよ」
『本当ですか!』
「うん。首の皮一枚つながった」
『おめでとうございます!』
「ありがとう」
素直な言葉が口から出てきた。大前に言われて、弓道を続けられることをより実感する。
『実はもう一つ。先輩にどうしても伝えたいことがあって……』
「伝えたいこと?」
『はい……』
「それにしても、楓先輩の射、素敵だったね」
「うん、僕もそう思うよ」
帰り道。僕の隣で凛は笑顔を見せている。
「男子もよかったよね。藤宮先生の驚いた顔、私初めて見た」
「僕も初めて見た。まさか藤宮先生があそこまで豹変するとは思ってもみなかった」
男子弓道部を散々馬鹿にしていた藤宮先生は試合後、僕達に向け頭を下げてきた。そして、僕が中学時代に全国大会優勝したことがあることを、知らなかったと告げてきた。
「それに『これからは道場で私達の指導をして下さい』だもんね。藤宮先生もようやく一のすごさに気づいたって感じ」
「僕は……すごくないよ」
僕はすごくない。すごいのは高瀬や古林だ。僕は自分の力だけでは、今の場所を取り戻すことはできなかった。
「まーた暗くなるような発言して。今日くらい喜びなさいよ」
バシッと背中を叩いてきた凛は、いつもと変わらず元気に笑顔を咲かせていた。
ブーブー。
携帯が鳴った。ポケットから取り出して画面に表示された名前を見る。
「誰?」
「大前さん。休日に通ってた道場で、教えていた後輩」
「そうなんだ。早く出てあげなよ」
「うん。ゴメン」
凛に断りを入れ、電話に出た。
「もしもし」
『先輩。私です』
「こんばんは」
『先輩、今日の結果どうでしたか?』
「今日の結果?」
『とぼけても無駄ですよ。真矢先生から聞きました。今日の試合で上位に入らないと、先輩達が弓道をできないって』
心配させないために、大前にはずっと今日のことを隠してきた。
「ごめん。言ってなかったよね」
『全くです。何でも話してくれると思ってたのに』
ぶつくさと小言を呟く大前は、まるで今隣に居る凛みたいだ。
「無事に弓道できることになったよ」
『本当ですか!』
「うん。首の皮一枚つながった」
『おめでとうございます!』
「ありがとう」
素直な言葉が口から出てきた。大前に言われて、弓道を続けられることをより実感する。
『実はもう一つ。先輩にどうしても伝えたいことがあって……』
「伝えたいこと?」
『はい……』