「一射目は二秒台だったけど、二射目と三射目は三秒前半、四射目に至っては三秒後半まで保っている。このまま続けていけば、会を取り戻せる日も近いんじゃないか」
「そ、そんな簡単じゃないですよ」
 咄嗟に的場先生の言葉を否定した。
 それでも僕は確かな手ごたえを、今日の試合で掴んだ気がした。
「でも、最後の一射は少し不自然な離れだったな」
「うん。古林君の言う通り。最後の一本は、少し違った離れだった」
「少し違った?」
 高瀬が首を傾げている。
「うん。少しだけね。でも、矢は的を射ぬいた。この事実は変わらないよ」
 射場へと視線を移す。目の前では女子の決勝が始まっていた。落に雨宮先輩がいる。女子も無事、決勝の立に臨むことができている。
 先輩にもお礼を言わないといけない。周りに仲間がいることに気づかせてくれた。それだけではない。くじけそうになったときに、たくさんの励ましの言葉をかけてくれた。そんな先輩に僕は応える射を見せることができたと思う。荒削りなところもあるけど、確かに成長できている。目の前の高瀬と古林と一緒に。最高のチームを見せることができた。僕達は四月から始まる関東大会予選に向け、ようやく舵を取りはじめた。