弓道は心技体全てが重要視されるスポーツ。特に精神面の強さが、勝負を決めると言っても過言ではない。自分のミスが、チームの足を引っ張る。それを肝に銘じなければ強くなれない。昔、翔兄ちゃんに言われたことを僕は思い出していた。
一射目を外した僕達だったけど、古林が落ち着いて最初の一射を中てたことで、勢いを取り戻した。僕はその勢いに乗っかるようにして、一射目を中てることができた。会は相変わらずだったけど、二秒後半はどうにかして保つことができていたと思う。
一方の岩月の放つ矢は、次々と的を射ぬいていった。
二射目を終え、岩月は六射六中。対する草越は六射五中。数字で見ると、決して差はないように見える。それでも弓道は、一射外しただけで勝負が決まることがある。どんなに練習を積み重ねたとしても、その日の試合運びによって万全のパフォーマンスを発揮することができないなんてよくあること。
とにかく正確な射を試みて、次の人に繋ぐ思いを胸に弓を引かないと、絶対に勝てない。
「「ッシャア!」」
三射目に入った橘は、当然のように中てた。一射目からの勢いをそのまま継続しつつ、ひたすら僕達にプレッシャーをかけてくる。
以前の橘は僕の後ろをついてくるだけで、自分から積極的に行動することがなかったはず。でも、今日の橘は中学時代とは全く違う。水を得た魚のように、いきいきと試合に臨んでいる。僕と一緒に練習をしていたころの橘とは別人だった。
――俺は、お前を超える。俺の中から、お前の存在を消してやる。
新人戦で言われた橘の言葉が思い起こされる。以前の自分と決別して未来を見据えている橘だからこそ、今の強さを手にしたのかもしれない。
でも、今の強さは橘が本当に追い求めたものなのだろうか。僕をライバルと思ってくれていた時とは根本から変わってしまっている。チームの為よりも、自分の為に弓道をやっているように見える。その姿は、どこか昔の自分と似ている気さえする。
「「ッシャア!」」
岩月の中の人が三射目を中てた。岩月が中てるたびに、歓声が飛び交う。
一方、僕達を応援してくれる人はどこにもいなかった。今日は女子弓道部も試合に来ている。だけど男子弓道部が起こした不祥事のせいで、未だにいい関係を築けていない。数少ない味方である雨宮先輩は、この後に行われる決勝の立に向け控室にいる。
一射目を外した僕達だったけど、古林が落ち着いて最初の一射を中てたことで、勢いを取り戻した。僕はその勢いに乗っかるようにして、一射目を中てることができた。会は相変わらずだったけど、二秒後半はどうにかして保つことができていたと思う。
一方の岩月の放つ矢は、次々と的を射ぬいていった。
二射目を終え、岩月は六射六中。対する草越は六射五中。数字で見ると、決して差はないように見える。それでも弓道は、一射外しただけで勝負が決まることがある。どんなに練習を積み重ねたとしても、その日の試合運びによって万全のパフォーマンスを発揮することができないなんてよくあること。
とにかく正確な射を試みて、次の人に繋ぐ思いを胸に弓を引かないと、絶対に勝てない。
「「ッシャア!」」
三射目に入った橘は、当然のように中てた。一射目からの勢いをそのまま継続しつつ、ひたすら僕達にプレッシャーをかけてくる。
以前の橘は僕の後ろをついてくるだけで、自分から積極的に行動することがなかったはず。でも、今日の橘は中学時代とは全く違う。水を得た魚のように、いきいきと試合に臨んでいる。僕と一緒に練習をしていたころの橘とは別人だった。
――俺は、お前を超える。俺の中から、お前の存在を消してやる。
新人戦で言われた橘の言葉が思い起こされる。以前の自分と決別して未来を見据えている橘だからこそ、今の強さを手にしたのかもしれない。
でも、今の強さは橘が本当に追い求めたものなのだろうか。僕をライバルと思ってくれていた時とは根本から変わってしまっている。チームの為よりも、自分の為に弓道をやっているように見える。その姿は、どこか昔の自分と似ている気さえする。
「「ッシャア!」」
岩月の中の人が三射目を中てた。岩月が中てるたびに、歓声が飛び交う。
一方、僕達を応援してくれる人はどこにもいなかった。今日は女子弓道部も試合に来ている。だけど男子弓道部が起こした不祥事のせいで、未だにいい関係を築けていない。数少ない味方である雨宮先輩は、この後に行われる決勝の立に向け控室にいる。