「答え……」
「これからの男子弓道部について。あと……一自身について」
 凛の問いに対して、僕は直ぐに答えることができなかった。
 男子弓道部については、はっきりとした答えが出ていると思う。二月の練習試合で勝つこと。いい成績を納めて藤宮先生に一泡吹かせること。そして、男子弓道部の場所や存在意義を取り戻すこと。それは、草越高校男子弓道部の英雄である翔兄ちゃんが求めたことでもある。
 でも、自分自身についての答えは出ていないし、今の僕にはわからなかった。
 それは早気という病気に打ち勝っていないからなのかもしれない。でも、もし早気になっていなかったとしたら、僕は何のために弓道を続けるのだろう。
 翔兄ちゃんに憧れたからかもしれない。大前にもそう答えた。でも、今思うとそれは単なるきっかけにすぎない。
 憧れだけでは弓道は続けられない。
 僕はどうして弓道を続けているのだろう。
「先輩のおかげで、男子弓道部の印象が少しずつ変わっている。それは、僕達がこれからも弓道を続けるために必要不可欠なことだと思う。だから先輩には本当に感謝しているし、僕達は練習試合で勝って、弓道部を廃部にさせたくないと思ってるよ」
 これは逃げているだけなのかもしれない。僕は凛の問いの片方だけ答え、もう一つの質問には答えなかった。口から発せられた言葉の全てが欺瞞に思えて仕方がない。男子弓道部の存在を盾にして、結局は自分自身を守っているだけだ。
 凛はそれをわかっているみたいだ。僕の返事に頷くだけで、それ以上追及してこなかった。