色々と考えを膨らませていると、目の前の古林が大きく息を吐いた。そして僕に視線を向けると口を開いた。
「お前が落をやらなくてどうするんだって言いたいんだ」
 僕は古林の言葉を理解しようとした。確かに落をやるのは不可能なことではない。でも、それだと試合に勝てる勝算が見えない。
「僕の状況を知っているだろ? 中りを期待できないのに、落にいる意味なんてない」
「中らないから落は駄目って、誰が決めつけたんだよ」
 古林の発言は間違っていない。でも、今は中りを求めるべきだ。
 間髪入れずに古林はそのまま続けた。
「落は弓道の花形だろ。真弓は中学の大会ではずっと落だっただろ」
「それは古林君だって……」
「確かに俺も落をやっていた。それでもこのチームは、真弓中心のチームだと思っている。真弓の支えがあるからこそ、今だって俺らは弓道をすることができているんだ」
 古林の言葉に高瀬もしきりに頷いている。
「でも、練習試合で上位に食い込まないと部活自体が……」
「だから、俺らはお前と心中するって決めたんだ。なあ高瀬」
 古林の声に高瀬が反応する。
「そうだよ。真弓君と心中するんだよ。男子弓道部の最初の部員は俺だ。でも、チームのエースと言われたら、経験が豊富な真弓君なんだよ。俺は古林君でもいいと思ってる。自分がへたくそだから。でも、どちらかを選べと言われたら必ず真弓君を落に推す」
 二人の思いが胸に刺さる。目の前で心中するとまで言ってくれた二人に対して、僕は胸が熱くなる思いでいっぱいになった。
「ありがとう。だけど、僕には二人を支えるだけの力がまだない。早気だって未だに克服できないでいるんだ。心中なんて、僕には重すぎるよ」
 視線を二人から逸らす。僕のせいで二人が弓道をできなくなることが嫌だった。これは、僕のわがままなのかもしれない。だけど自分の問題も解決できていないのに、他人の希望を背負うことなんて愚かなことだと思う。
「真弓君は一人で弓道やってるの?」
 高瀬の問いに虚を付かれた。
 そんな訳がない。そう答えたいのに言葉に詰まってしまう。
「今まで言わなかったけど、俺や古林君に一言も相談してくれたことなかったよね?」
「それは……二人に心配かけたくなくて」
「それがだめなんだよ!」
 高瀬が声を荒げた。喫茶店にいる人達が再度視線を向けてくる。高瀬はその視線を気にせずに続けた。