週明け月曜日の放課後。男子弓道部全員が的場先生に呼び出された。
「よし、お前ら荷物持ったな。それじゃ、行こうか」
「どこに行くんですか?」
「練習場所だよ」
 高瀬の質問に答えた的場先生は、そのまま職員室を出て行った。僕達も慌てて後を追う。まさか的場先生が練習場所を見つけているとは思ってもみなかった僕達は、言われた時に拍子抜けしてしまった。
 電車を乗り継いでやってきた駅は、僕をさらに驚かせた。
「ここって、真弓君の最寄り駅だよね?」
「そうだね。でも、ここら辺に練習できる場所なんてないと思うけど」
 心当たりのない僕は、的場先生の言う練習場所の推測が全くできなかった。それでもしばらく歩いていると、僕にも練習場所となる場所が推測できた。
「着いたぞ」
 視線の先には中学校が屹立している。間違いない。僕の出身中学校だ。
「中学校って、まさか先生!」
「高瀬の思っている通りだ。ここで練習する」
 高瀬の反応に的場先生は笑みをみせる。
「ここって、真弓の中学だよな?」
「そうだよ。僕の中学だよ」
 古林は中学で弓道をやっていたと言っていた。僕の出身中学校を知っていてもおかしくはないので、そこまで驚くことではない。問題は、的場先生が中学校を練習場所に選んだことだ。確かに道場はあるから練習はできるけど。
「先生は中学生と一緒に練習することを想定してるんですか?」
 僕は気になったことを的場先生にぶつける。先生は素直に答えてくれた。
「そうだ。お前らがここで練習できるのは休日と祝日だけ。ただし、とある条件をのんでもらうけどな」
「条件?」
「まあ、後でのお楽しみだ」
 的場先生はそのまま職員玄関まで行くと、手続きを済ませる。しばらくして、とある先生が僕達の前に現れた。
「的場! 久しぶりだな」
真矢(まや)も元気そうで何よりだ」
 初めてあった空気を感じさせないくらいフレンドリーな二人を見て、高瀬がすかさず声を上げた。
「的場先生。そちらの方は?」
「おっと。悪い。紹介が遅れたな。こいつは松草(まつくさ)中学の真矢先生。この中学の弓道部の顧問の先生だ。それと、俺の高校時代の同級生」
 にっと笑みを見せた的場先生は、真矢先生とじゃれ合う。一方の真矢先生も、久しぶりに会った同級生との再会を楽しんでいるみたいだった。
「なあ、真弓?」
「何?」
「道場ってどんな感じなんだ?」