「一年生に、部員の子が一人います。それに、今からでも部員を集められるはずです」
「楠見、本当にしつこい。しつこい奴って嫌われるぞ」
「嫌われてもいいです。男子弓道部に戻ってきてくれるなら」
「だから戻らないって。どけよ」
「痛っ」
ドンっと凛を小突いた上級生は、地面にしりもちをついた凛を気にせず、そのまま去って行った。地面に倒れこんだ幼馴染の元に駆け寄り、僕はそっと手を差し伸べた。
「ありがとうございま――」
「久しぶり」
「……」
僕は凛の手を取って立ち上がらせた。僕に気づいた凛は、何事もなかったように道場に向かって歩き出そうとする。僕は咄嗟に凛の右手を掴んだ。
「何よ」
「凛に話があって」
「聞きたくない」
怒っているのか、凛は僕の手を振り払うと再び歩き出した。
「ごめん。あの時は僕が悪かった」
大声で凛の背中に向け言葉を放つ。すると凛はその場で立ち止まってくれた。
「あの時、凛の言っている意味が僕には分からなかった。確かに僕はやりもせずに諦めていたと思う。自分で勝手に限界を決めて、やろうとしなかった。でも、今は違うんだ」
凛の元に駆け寄り、視線を合わせる。凛はまだ俯いたままだった。
「僕は弓道部に入ることにしたよ。そして、男子弓道部を復活させる」
僕の言葉に反応した凛は、俯いていた顔を上げた。僕と凛の視線が重なる。僕の強い決意を凛に届けたい。その一心で凛を見つめ続ける。
しばらくして、僕から視線を逸らした凛が話し始めた。
「でも、どうして急に……」
「藤宮先生に男子弓道部の悪口を言われて許せなかった。だから先生を見返したいと思った」
凛は僕の言葉を黙って聞いてくれている。続けて僕は話した。
「それに、翔兄ちゃんとの約束もあったから。弓道部を失くしたくないんだ」
今のままだと藤宮先生がいる限り、男子弓道部は何もできないまま終わってしまう。
「そっか。なんか、安心したかも」
「安心?」
「だって、このまま何もせずに終わっちゃうのかと思ってたから」
凛は嬉しそうに笑顔を浮かべていた。僕も少しは前に進めたのかもしれない。
「そういえば、さっき上級生と言い合ってたよね?」
「聞いてたんだ」
「うん。ゴメン」
盗み聞きをしていたことを謝った僕に向け、凛は乾いた声で言った。
「楠見、本当にしつこい。しつこい奴って嫌われるぞ」
「嫌われてもいいです。男子弓道部に戻ってきてくれるなら」
「だから戻らないって。どけよ」
「痛っ」
ドンっと凛を小突いた上級生は、地面にしりもちをついた凛を気にせず、そのまま去って行った。地面に倒れこんだ幼馴染の元に駆け寄り、僕はそっと手を差し伸べた。
「ありがとうございま――」
「久しぶり」
「……」
僕は凛の手を取って立ち上がらせた。僕に気づいた凛は、何事もなかったように道場に向かって歩き出そうとする。僕は咄嗟に凛の右手を掴んだ。
「何よ」
「凛に話があって」
「聞きたくない」
怒っているのか、凛は僕の手を振り払うと再び歩き出した。
「ごめん。あの時は僕が悪かった」
大声で凛の背中に向け言葉を放つ。すると凛はその場で立ち止まってくれた。
「あの時、凛の言っている意味が僕には分からなかった。確かに僕はやりもせずに諦めていたと思う。自分で勝手に限界を決めて、やろうとしなかった。でも、今は違うんだ」
凛の元に駆け寄り、視線を合わせる。凛はまだ俯いたままだった。
「僕は弓道部に入ることにしたよ。そして、男子弓道部を復活させる」
僕の言葉に反応した凛は、俯いていた顔を上げた。僕と凛の視線が重なる。僕の強い決意を凛に届けたい。その一心で凛を見つめ続ける。
しばらくして、僕から視線を逸らした凛が話し始めた。
「でも、どうして急に……」
「藤宮先生に男子弓道部の悪口を言われて許せなかった。だから先生を見返したいと思った」
凛は僕の言葉を黙って聞いてくれている。続けて僕は話した。
「それに、翔兄ちゃんとの約束もあったから。弓道部を失くしたくないんだ」
今のままだと藤宮先生がいる限り、男子弓道部は何もできないまま終わってしまう。
「そっか。なんか、安心したかも」
「安心?」
「だって、このまま何もせずに終わっちゃうのかと思ってたから」
凛は嬉しそうに笑顔を浮かべていた。僕も少しは前に進めたのかもしれない。
「そういえば、さっき上級生と言い合ってたよね?」
「聞いてたんだ」
「うん。ゴメン」
盗み聞きをしていたことを謝った僕に向け、凛は乾いた声で言った。