高瀬は僕の質問を聞くと、右手を上げ人差し指を突き立てた。そして、それを自分に向けた。
「知ってるも何も、俺がその部員だよ」
開いた口が塞がらなかった。てっきり僕は凛の好感度を上げるために、高瀬が弓道の勉強をしていると思っていたから。
「どうして驚くのさ。俺が弓道部じゃいけないのかな?」
「いや、別にそういうわけじゃないけど。サッカー部やバスケ部かと思ってたからさ」
「ははは。よく言われるよ」
高瀬は軽く笑った。
「それじゃ、中学は弓道部?」
「いや、俺の中学校には弓道部がなかったんだ」
「へぇ。なら、身近に弓道経験者がいたとか?」
「それも違うかな」
高瀬はどうして弓道部に入ったのだろう。僕はそのことが気になって仕方がなかった。
必死に答えを導き出そうと考えていると、高瀬が口を開いた。
「とある試合を見に行ったんだ」
「試合?」
「二年前の全国高等学校総合体育大会弓道競技大会。高校生の憧れ、インハイだよ」
インハイ。毎年夏に開催される高校生の憧れの舞台。全国の強者が一番を目指して競い合う。
「友人の付き添いで行ったんだ。弓道なんて普段見ない競技だし、はじめは本気で見てなかった。でも、大会の中で一人だけ異様な雰囲気を放っている人がいて、引き込まれた」
「それって?」
高瀬は僕を一瞥すると、答えた。
「草越高校の神道翔。俺達の先輩さ」
高瀬から翔兄ちゃんの名前が出るとは思ってもみなかった。いつも近くにいたからわからなかっただけかもしれないけど、翔兄ちゃんの知名度は、中学生にも知られるくらい高かったみたいだ。
「俺は、神道選手に憧れたんだ。草越高校三連覇の立役者。そんな先輩の育った場所で弓道をしたいと思って草越に入学したんだ」
高瀬も僕と同じで翔兄ちゃんに心を動かされた一人だった。高瀬がやたらと弓道に詳しい理由も理解できる。だけど、僕はどうしても引っかかることがあった。
「理由はわかった。なら、どうして草越に入ったのさ。男子弓道部が大会に出れないことくらい知ってただろ?」
いくら翔兄ちゃんが好きでも、大会に出ることができない高校に入学するとは僕には思えなかった。
「……知らなかった」
「えっ?」
「知らなかったんだ。大会に出れないこと。ましてや弓道部がこんな状況になってたことも」
「知ってるも何も、俺がその部員だよ」
開いた口が塞がらなかった。てっきり僕は凛の好感度を上げるために、高瀬が弓道の勉強をしていると思っていたから。
「どうして驚くのさ。俺が弓道部じゃいけないのかな?」
「いや、別にそういうわけじゃないけど。サッカー部やバスケ部かと思ってたからさ」
「ははは。よく言われるよ」
高瀬は軽く笑った。
「それじゃ、中学は弓道部?」
「いや、俺の中学校には弓道部がなかったんだ」
「へぇ。なら、身近に弓道経験者がいたとか?」
「それも違うかな」
高瀬はどうして弓道部に入ったのだろう。僕はそのことが気になって仕方がなかった。
必死に答えを導き出そうと考えていると、高瀬が口を開いた。
「とある試合を見に行ったんだ」
「試合?」
「二年前の全国高等学校総合体育大会弓道競技大会。高校生の憧れ、インハイだよ」
インハイ。毎年夏に開催される高校生の憧れの舞台。全国の強者が一番を目指して競い合う。
「友人の付き添いで行ったんだ。弓道なんて普段見ない競技だし、はじめは本気で見てなかった。でも、大会の中で一人だけ異様な雰囲気を放っている人がいて、引き込まれた」
「それって?」
高瀬は僕を一瞥すると、答えた。
「草越高校の神道翔。俺達の先輩さ」
高瀬から翔兄ちゃんの名前が出るとは思ってもみなかった。いつも近くにいたからわからなかっただけかもしれないけど、翔兄ちゃんの知名度は、中学生にも知られるくらい高かったみたいだ。
「俺は、神道選手に憧れたんだ。草越高校三連覇の立役者。そんな先輩の育った場所で弓道をしたいと思って草越に入学したんだ」
高瀬も僕と同じで翔兄ちゃんに心を動かされた一人だった。高瀬がやたらと弓道に詳しい理由も理解できる。だけど、僕はどうしても引っかかることがあった。
「理由はわかった。なら、どうして草越に入ったのさ。男子弓道部が大会に出れないことくらい知ってただろ?」
いくら翔兄ちゃんが好きでも、大会に出ることができない高校に入学するとは僕には思えなかった。
「……知らなかった」
「えっ?」
「知らなかったんだ。大会に出れないこと。ましてや弓道部がこんな状況になってたことも」