――明日は絶対に見に来てね。来なかったらぶっ飛ばすからな。
 目が覚める。
「ははは」
 笑いが止まらなかった。上体を起こして、枕元にある時計に手を伸ばす。
「六時か……」
 大きく伸びをする。
 少しだけ身体がだるい。いつもより早く目を覚ましたせいかもしれない。
 ベッドから抜け出し、カーテンを開ける。差し込む日差しが僕を照らし、そして棚に飾ってあるトロフィーにも光が注がれる。僕は棚の方に歩み寄った。目の前には、昨日新たに加わった、僕のリスタートを意味する賞状が飾ってある。
 僕達は関東大会予選会で三位入賞をすることができた。
 土曜日の予選で、橘率いる王者岩月といい試合ができた僕達は、二回目の十二射も十中という成績を残し、余裕を持って十六強に加わることができた。そして日曜日の試合。僕達は精一杯食らいついた。
 しかし試合慣れしていない僕達とは違い、岩月や東武農業第三といった強豪校は、安定して的中数を伸ばしていった。
 結局、優勝したのは岩月Aチームだった。
 累計四十八射して四十四中といった予選会の新記録をたたき出すほど、素晴らしいパフォーマンスをみせた。僕達、草越Aチームは東武農業第三Aチームの四十中に次ぐ三十九中だった。上位四チームが関東大会本選に進めるこの大会で僕達が進めたのは、運があったからなのかもしれない。例年以上に他チームの的中数が低かったこともあり、それがチームに精神的余裕をもたらした。結果だけ見ると、四位のチームは三十中と僕達とは大差がついていた。
 予選会三位の賞状の隣に視線を移す。そこには朝日を浴びた盾が飾ってある。
 今回の大会で僕が得た大切な勲章。
 久しぶりの大会で、僕は技能優秀賞に選ばれた。
 技能優秀賞。
 射技や的中、体配において優れた選手が受賞する賞。僕はこの大会で多くの評価をもらうことができた。
「中学生の頃、全国二連覇した時の射が戻ってきた」
「会が戻ったおかげで、本来の射を取り戻せている。久しぶりに楽しい射を見れた」
「高校生とは思えない射技。文句のつけようがない」
「予選の一射目で美しい涙を見せてくれた。そこからの射は圧巻だった」
 涙を見られていたことは恥ずかしかったけど、僕はそれだけ価値のある試合をできた。それに、僕達男子弓道部にとって関東大会出場はとても嬉しいことだった。