今日で人間の姿のシロと会うのは最後になってしまう。

「行ってきます!」

「行ってらっしゃい!」

おじいちゃんに挨拶をしてから、神社を目指す。

この階段本当に疲れる。

桜の木の下で待っているとシロはやってきた。

「今日ははやいね。」

「うん。最後だから、少しはやく来たの。」

「そうか。明日の午前中には帰るんだよね。」

「うん。」

シロと私の間には少し気まずい空気が流れる。

桜の木の花びらが風と共に地面に落ちる。

少しだけ寂しい。

「私、帰りたくないって言ったらどうする?」

「えっ?」

「急にびっくりだよね?」

「何かあったの?」

「私ね、みんなから嫌われてるみたいで、友達がいないの。」

「いじめられてるの?」

「違うよ。人見知りなの。だからなかなかみんなと話せなくて…」

「でも僕とは話せてるよ?」

「なんか、シロは平気なの。」

「僕と話せるんなら大丈夫だよ。僕と話している時みたいにみんなと話せば。自分から声をかけてみるの。そしたら陽菜なら大丈夫。」

「頑張る。頑張るから、友達の話ができるまで待っててくれる?」

「もちろん。楽しみに待っているよ。」

嬉しくなり、私は子供のように笑った。

それはシロも同じだった。