ちなみにバカッターと言うのは、面白いからといって迷惑な行為や犯罪を示唆するような写真をShabetter上に投稿する行為の蔑称だ。
 これらの多くは炎上することによって住所や氏名、それから学校や職場などの個人情報を特定されて、最後には報いを受けることが多い。
 今回の被害者たちは自ら投稿したわけではないが、普段からこんなことをしているのだったら同情心はまったく湧かない。自業自得だ。
「でもそんな簡単に、個人情報って特定できるもんなのか?」
 バカッターが発生すれば炎上し、個人情報などがあっという間に特定される。
 何となくその流れは分かるのだが、どういう方法でネット上だけの情報だけでそこまで個人を特定できるのか俺には分からない。
「ネットの住人は怖いからね~。例えば過去ログ……書き込み履歴のことだね。そこから学生ならテスト期間だとか、行事の時期、そういう学校名が特定できそうなことを言ってたらすぐに突き止められちゃうと思うよ。頭の緩いリア充(笑)は平気で素顔とか本名を晒しちゃうから、本人の特定は簡単かもね。例えば雪ノ下さんなんか、アカウント名が本名のまんまだし。そりゃすぐにバレるって」
 やれやれと肩を竦めるカズラ。珍しく嫌味な言い回しから、余程鬱憤が溜まっているのだと想像ができる。
「あとはShabetterはただでさえ、炎上しやすいSNSだからね」
「そうなのか? 俺はやってないから、どうにも想像しにくいな」
 Shabetterは通称〝ミニブログ〟と呼ばれる百四十文字以内の単文と写真や動画を投稿できるSNS、と言うことは知ってはいる。
 だが実際に登録しているわけではないので、カズラの説明にいまいち実感が湧きにくい。
「そう言えば、お兄ちゃんはShabetterはやってないんだっけ」
「ああ、そうだな」
「それじゃ、Shabetter初心者のお兄ちゃんのために、カズラちゃんが説明して進ぜましょう」
 確認するように尋ねてくるカズラに、俺は素直に頷いて答える。
 するとカズラはShabetterにログインし、自分のアカウントを画面に表示した。
「まあ、簡単に言えばShabetterってのは、百四十文字以内の文章をみんなと共有するサービスのことだね」
「ここの画面が自分専用のページなのか?」