◇第三の怪『音楽室の無人伴奏』
「あと少しで音楽室だな」
「そうだな」
見覚えのある景色が目に入ってくると、俺と飛燕は顔を見合わせる。
雑談に興じているといつの間にか、音楽室の近くまで来ていたらしい。
「確か今度の噂は夜の音楽室から、ピアノの伴奏が聞こえてくるってヤツだっけ?」
「そうそう。ンで中を見てみると、誰もいないって話だったな」
噂のおさらいをすると、無人の音楽室からピアノの伴奏が聞こえてくると言うのが、これから確かめる怪談の内容だった。
「ただの聞き間違い……ってのが一番、なんだけどな」
「それじゃ、肝試しにならないじゃんかよ」
肩を竦めながら冗談っぽく言葉を続ける。
飛燕はそんな俺を見て、からかうように笑った。
「――――」
まもなく音楽室が見えてくる距離までやって来た時、俺たちの耳にはなにか聞こえてきた。
それは音だ。ただの音でなく楽器の演奏にも聞こえる。しかもよく見知った楽器の、だ。
「……これって、もしかして」
緊張を見て取れる顔持ちで飛燕は、ゴクリと固唾を飲んで呟く。
「ああ、ピアノの音だな」
図ったかのようなタイミングで、ピアノの演奏は始まったのだ。
まるで早くここまで来い、とでも言っているかのように。
「行くぞ、飛燕」
「あ、待てって――」
躊躇うように足を止める飛燕を後目に、俺は音楽室に向かって歩き出す。
ここまで来れば、もう行くしか選択肢はない。
飛燕は一瞬だけぽかんと虚を突かれたようにしていたが、慌ててすぐにあとを追ってくる。
「流石にここまで来ると、肝が据わってるな」
速度を緩めることなく進む俺を見て、飛燕は感心したように言う。
「なあ、飛燕」
そんな飛燕を横目に俺は、静かに口を開いた。
「今回の怪談は、人為的なものを感じないか?」
「人為的?」
俺の言葉の意味がよく理解できないのか、飛燕は怪訝そうに首を傾げる。
「あと少しで音楽室だな」
「そうだな」
見覚えのある景色が目に入ってくると、俺と飛燕は顔を見合わせる。
雑談に興じているといつの間にか、音楽室の近くまで来ていたらしい。
「確か今度の噂は夜の音楽室から、ピアノの伴奏が聞こえてくるってヤツだっけ?」
「そうそう。ンで中を見てみると、誰もいないって話だったな」
噂のおさらいをすると、無人の音楽室からピアノの伴奏が聞こえてくると言うのが、これから確かめる怪談の内容だった。
「ただの聞き間違い……ってのが一番、なんだけどな」
「それじゃ、肝試しにならないじゃんかよ」
肩を竦めながら冗談っぽく言葉を続ける。
飛燕はそんな俺を見て、からかうように笑った。
「――――」
まもなく音楽室が見えてくる距離までやって来た時、俺たちの耳にはなにか聞こえてきた。
それは音だ。ただの音でなく楽器の演奏にも聞こえる。しかもよく見知った楽器の、だ。
「……これって、もしかして」
緊張を見て取れる顔持ちで飛燕は、ゴクリと固唾を飲んで呟く。
「ああ、ピアノの音だな」
図ったかのようなタイミングで、ピアノの演奏は始まったのだ。
まるで早くここまで来い、とでも言っているかのように。
「行くぞ、飛燕」
「あ、待てって――」
躊躇うように足を止める飛燕を後目に、俺は音楽室に向かって歩き出す。
ここまで来れば、もう行くしか選択肢はない。
飛燕は一瞬だけぽかんと虚を突かれたようにしていたが、慌ててすぐにあとを追ってくる。
「流石にここまで来ると、肝が据わってるな」
速度を緩めることなく進む俺を見て、飛燕は感心したように言う。
「なあ、飛燕」
そんな飛燕を横目に俺は、静かに口を開いた。
「今回の怪談は、人為的なものを感じないか?」
「人為的?」
俺の言葉の意味がよく理解できないのか、飛燕は怪訝そうに首を傾げる。