「お嬢、大丈夫か?」

事務所に明空を運んだ各務は不安げに呟く。

明空は応接用のソファーの上でタオルケットを掛けられて眠り続けていた。

荒神はそんな明空の身体から離れ、今は白い着物に杖という、明空の想像を具現化した姿となっていた。

名前を呼んでも、身体を揺すっても、明空はただこんこんと眠り続けていた。

いつもは騒がしい<まごころファイナンス>の社員たちも心配そうに明空の周囲を取り囲んでいる。

その様子に、千草はようやく口を開いた。

「明空さんは、もうすでに亡くなっておるのですね?」

「……!?」

各務は驚いて自分の祖母を振り返る。

着物姿の千草はいつものように穏やかに、しかしいつになく真剣な眼差しで、明空のそばに寄り添うように立っている荒神さまに語り掛けた。

「……そなた、いつから気付いておった?」

「明空さんに初めておんぶしてもらった時に……。荒神さまの気配は感じるのに、明空さん自身の気配がひどく弱々しくて……。

あれはまるで生命の火が消えかけた、臨終の病人のような〈気配〉でした」

「いや!ちょっと待ってくれ!そんな馬鹿なことがあるか!?お嬢は飛んだり跳ねたり、あんなに元気だったじゃないか!

それが死んでいたなんて!」