いつか僕の知らないところで、こんなふうに森瀬とキスをするんだろうか。

──でも今は、僕のものだ。


そっと唇を離すと、睫毛が絡み合うほどの至近距離で莉珠と目が合う。

いつもぶれることのない色素の薄い瞳が、揺れて見えた。


「きらるん、」


続きを言わせる前に言葉を発する。


「予行練習、だよ」


「え?」


「莉珠が森瀬と付き合った時の」


すると、莉珠が切なそうに頬を緩めて笑った。


「私よりきらるんの方がキス下手だね」




失恋から始まった、不毛な恋。


隣にいるには、片想いでいるしかなかった。