「莉珠、起きて。こんなとこで寝てたら風邪引くよ」
僕の声に反応するように莉珠の瞼がピクッと揺れ、やがて大きな瞳が開かれた。
「あれ、寝てた……?」
上体を起こしながら、ふわあっと欠伸をする莉珠。
そして僕の顔を見つけるなり、蕩けるように破顔した。
「あ、おかえり。今ね、すごく幸せだったの。きらるんの夢見てたんだよ」
それは不意打ちの反則技だった。
余裕のない僕の心を揺さぶるには十分すぎるほどの。
周りには人がいない。
考えるよりも先に、呟いていた。
「……協力、してやるよ」
「へ? なにを──」
言葉の意味を咀嚼していないままの莉珠の腕を掴み、覆いかぶさるように強引に唇を押し当てた。
「……っ」
一瞬、突然のことに身を硬くした莉珠。
だけど独りよがりな口づけを、莉珠は拒まず、受け入れた。