公園へとやってきた僕は、そこでベンチに腰掛ける由衣を見つけると彼女に近付き口を開いた。

「ーー由衣。記念日おめでとう」

　そう告げながらプレゼントを差し出せば、僕を見上げて驚いたような顔を見せる由衣。
　きっと出し抜けに出されたプレゼントに驚いたのだろう。そんな彼女が可愛くてクスリと微笑む。
　驚きに固まったままの由衣は、少しだけその瞳を大きく開かせると「……えっ？ 」と小さく声を溢した。

「僕達の交際記念日のプレゼントだよ」

　優しく微笑みそう告げた刹那、視線を横に流した由衣が震える口元から小さな声を漏らした。

「……っあ……っ」

　怯える表情をさせる由衣の視線を辿ってみると、そこにはーーアイツが立っていた。

　そう、アイツは由衣のストーカー。
　この一カ月、何度も由衣の近くで見かけたから間違いない。
　こんな日にまで姿を表すなんてーーっ。

　僕は怒りに震える拳を握りしめると、カタカタと小さく震えだした由衣を横目に男を鋭く睨みつけた。

「た……す……けて……っ」

　小さく震える声を喉から絞り出した由衣。そんな彼女に背を向けると、男と対峙するようにして由衣の前に立ち塞がる。
　それを目にした男は勢いよく駆け出すと、僕に突進するようにしてそのまま胸倉を掴み上げた。

「……っ由衣から離れろっ！ 」

　僕の胸倉を掴む男は、そのまま引きずるようにして僕を由衣から遠ざけようとする。僕はダラリと垂れ下がった右手をポケットへ入れると、忍ばせていたナイフ取り出し目の前の男の腹にズブリと突き刺した。

　男は一瞬大きく目を見開くと、次の瞬間、小さく呻き声をあげて綺麗に整った顔を醜く歪めた。
　その醜く歪んだ顔を見つめながら、僕は何度も何度も繰り返しナイフを腹に突き刺さす。その何度目かで、ついにその瞳に生気を宿さなくなった男は僕の腕からズルリと崩れ落ちた。

「っいやぁーーーーっっ！！！！ 」

　倒れる男に駆け寄りその場で泣き崩れる由衣。僕はゆっくりと視線を足元へ移すと、ピクリとも動かなくなった男を眺めた。

　あぁ……やっとアイツがいなくなった。
　今日はなんて素敵な日なんだろう。

　足元で泣き崩れる由衣を見下ろし、僕は歓喜の微笑みを湛えて口を開いた。

「由衣。”一カ月”、おめでとう」




　ーー今日は、僕と彼女の交際記念日。





　ーー完ーー