bond~そして僕らは二人になった~

 太一の言葉に紗雪は何度も頷いた。
 静寂に包まれた空間が太一と紗雪を包み込む。空には未だにベテルギウスが綺麗な輝きを放っている。
 多くの天文学者は言っていた。ベテルギウスの超新星爆発の明るさは、満月よりも明るくなる程度だと。しかし実際は違った。ベテルギウスは、太陽に匹敵するような明るさで今もなお輝いている。この明るさを予想していた人は、誰もいなかった。今までに起こった超新星爆発を元に算出した予測データは、ベテルギウスの前では使い物にならなかったのだ。
 科学には未知の可能性が秘められている。それは当然、ボンドにも言えることだと思う。
 ボンドによって不倫は減少して、離婚率も下がった。その分、幸せになっている人は確実に増えている。それはとても良いことだと太一は思っている。
 でも、ボンドで恋愛の全てが決まることは絶対にない。そう強く太一が思えるのも、科学では絶対に導き出せない答えが、絶対にあるから。
 そう気づかせてくれた存在が、太一の隣にいるから。
「あのさ、改めていうのもなんだけど……紗雪に言いたいことがあるんだ」
 真っ直ぐな視線を紗雪へと向ける。
 誰かを守りたいと思う気持ち。誰かを愛しく思う気持ち。その温かい気持ちは、ボンドによって左右されることは決してない。
 だからこそ太一は思う。
 ボンドが示すのは奇跡だとか運命だとか、そう言った具体的に言い表せない感情に対する答えなのではないかと。
 心の底から結ばれる。そして幸せになる。そんな目に見えない感情の答えがボンドにあるのなら。
 これから太一は違う答えを求めていく。だって今太一が紗雪に抱いている気持ちは、ボンドでは決して表せないものなのだから。
 その表せない答えを見つける為にも、太一は紗雪に伝えたい。
 一人から二人になったこの世界で、二人にしかわからない答えを見つけるために。
「俺と付き合ってください」