俺に近づきながら詰問する麗華だったが、ある不安がわき起こって俺は周囲を見渡す。

 学校のマドンナの麗華が俺に話しかけに行った時点で、クラスメイト達は俺たちふたりに注目していた。しかも、普段は上品そうに落ち着いている麗華が俺に対して憤っているのだ。

 クラスメイトのほとんど男は、程度の差こそあれど美しい麗華に好意を持っている。チャラ男の俺が麗華に責められている光景は、彼らに「あいつ俺たちの麗華ちゃんに何しやがったんだ」という憤りを植え付けていることに間違いなかった。
 
 しかも、麗華は「愛」だの「告白」だの、男子達が聞き逃せないワードを連発しやがったのだ。彼らはさらに俺に不信感を抱いたに違いなかった。

 ――このままではまずい。


「麗華さん。そういう込み入った話は、ちょっと人がいないところでしようか」

 幸い、まだ朝のホームルームまで時間はあった。麗華とふたりで教室から消える……というのは、さらに男子達に誤解を与える気はしたが、まずは彼女が俺にいちいち迫るのをやめさせなければいけないだろう。


「ふん、やっと私の話を聞く気になったようね。いいわよ」


 得意げに偉そうに麗華は言う。見目麗しいためか、そんな不遜な態度も魅力的に映ってしまう。

 というわけで、人気のほとんどない廊下の隅まで俺と麗華はやって来た。そして俺は、開口一番こう言った。


「告白が罰ゲームって、今も昔も変わらないよね」


 麗華は少しだけ考え込んだ。しかしすぐに顔を真っ赤にして俺に詰め寄ってきた。