引っ越し用のトラックがその戸建ての前に止まっていた。どうやら新たな隣人がやってくるようだが、高校生男子にとって近所付き合いなど関係ない。俺は特に気にせずに、自宅へと入った。

 喉が渇いた。冷蔵庫からペットボトルのスポーツドリンクを取って、ひと口。するとインターホンが鳴った。今家には俺以外誰もいない。

 無視しようかとも思ったが、以前にそれで宅急便の受け取りを逃したことで姉に非常に怒られたので、出ることにする。


「はい」

「お忙しいところ申し訳ありません。隣に越してきたものです。挨拶に参りました」


 その声は、中年から高齢の男性だった。隣人の家長が直々に挨拶に参ったのだろう。なんとなくどこかで聞いたことのあるような声の気がしたが、その世代にほとんど知り合いはいないので、気のせいだと決め込む。


「はい、少々お待ちください」」


 そう言ってから、スポーツドリンクをまたひと口口に含む。――すると。


「今回は居留守は使わないのね」


 インターホン越しに聞こえてきた声を聞き、思わずスポーツドリンクを噴き出してしまった。デジャブ感半端ない。

 ――その高飛車そうな声は。間違いない。あの女だ。

 以前は迫られるたびに全力で逃げていた相手。しかし俺は急いで玄関へと向かった。噴いたスポーツドリンクのことなど放り出し、猛ダッシュで。

 久しぶりに聞いた彼女の声。どうしてこんなに胸が高揚するのだろう。