その後麗華は、俺に付きまとうことはなくなった。嵐が通り過ぎた後は、やけに静かに思えた。唯一彼女に会うのは学校だったが、全く関わることなかった。

 たまにふと目が合うことはあった。しかし、以前のようにゴミ虫を見るような瞳ではなく、代わりに麗華の瞳は寂しさ、切なさ、歯がゆさ……そんな光が宿っているように見えた。

 以前、俺にとってはただの風景の一部だった西園寺麗華という存在は、あの出来事以来そうではなくなっていた。毎日、教室内での彼女の存在を確認してしまう自分がいた。

 麗華に対して、好きとか嫌いとか、そういう気持ちを抱いているわけではない……と思っている。ただ俺に強烈なアピールをしてきた彼女が一瞬で静かになってしまったことに、俺は寂しさを覚えてしまったのだろうと思う。

 そんなことをしている間に夏休みになり、もう休みも後半だ。麗華とはもうひと月近く会っていない。
 俺はなんとなく、適当に女の子たちと遊ぶのはやめた。そんなことをする気はまったく起きなくなった。男友達や、悪友の弥生としけた遊びをすることはあったけれど。

 その日は弥生とファーストフード店で夏休みの宿題を進めた後、夕方家へ帰宅した。少し前まで空き地だった隣の敷地に、やたらとモダンなデザインの一戸建てが建っていた。建築費に糸目をつけず、さぞ有名なハウスメーカーに依頼したんだろうなあと思われるその洗練された外観の注文住宅は、一ヵ月ほど前から建築が始まり、つい数日前に工期を追えたようだった。