なんでそんな寂しいことを言うのだ。縛ったっていいんだよ、君は。俺の一生を、十五歳で死んでしまった君が奪ってしまっていいんだよ。
春香とは中学生の時に知り合って、仲良くなって、自然な流れで付き合うことになった。大人から見たら、十代半ばの俺たちの恋愛なんて、おままごとにしか思えないかもしれない。だけど、俺は自分のすべてを春香に捧げるような気持ちで、彼女を愛していた。
もうあんな恋はできない。できるはずがない。失った時の絶望感が半端なかった。まさにこの世の終わりだった。
世界中のすべての人間が死ぬ代わりに、俺と春香だけが地球上に残れると神様に言われたら、俺は間違いなく世界を崩壊させる魔王となるだろう。
――あんな想いはもうこりごりなのだ。だから俺は、君に一生しがみつく。かわいくて頭が軽い女の子たちと遊ぶことで、時々気を紛らわせて。
線香を供えて、春香の幻影を今日も追う。バラの花ことばは「永遠の愛」。春香が亡くなってから、ずっと俺は白昼夢の中にでもいる気分だった。永遠の愛とかいう、春香への後ろ向きな気持ちに、俺を浸らせる。
「……いると思ったわ」
そんな俺の背後から、そんな声が聞こえてきた。最近やたらと怒っていることが多い声の持ち主だったが、珍しく神妙な声音だった。
彼女の来訪は、ある程度予想していた。弥生に俺のどこか好きなのかを尋ねられた時に、「亡くなった知人の墓参りを忘れない」と、昨日言っていたからだ。