俺にとっては面倒な流れになってきてしまった。しかし女子ふたりはまるで義兄弟の契りでもかわしたかのように、お互いに信頼の眼差しを向けていた。


「うん、応援するよ。旭はあんたの思っている通り、ああ見えていい奴だよ」

「知っているわ!」


 長年の親友かのように心を通じ合わせているふたり。しかし非常にまずい。何を焚きつけているんだ、弥生。

 そういえば以前に、「あんた、もう一生恋愛しないつもり?」と寂しそうに弥生が言っていた覚えがあった。あいつはああ見えて心根は優しいので、俺の将来を心配しているのだろう。

 真剣な恋愛から一抜けた俺に、平凡な幸せを築いてほしいといまだに思っているのかもしれない。麗華はいいきっかけだと思ったのだろう。

 ――そんなのまっぴらごめんだ。


「……麗華さん」

「なーに?」


 弥生と意気投合したことで機嫌がよくなったらしかった。麗華はニコニコしながら、返事をした。その笑顔をすぐにぶち壊すのは気が引けたが、仕方がない。


「俺の恋人だっていうなら……わかってるよね?」

「え?」

「さっきも言ったでしょ。キスとか、それ以上のこととか。俺は君と今日にでもしたいんだけど。そういうことさせてくれる人じゃなきゃ、俺一緒に居るの無理だから」


 うすら笑いを浮かべてそう言い放つ。麗華の笑顔が凍った。そしてすぐに俯いて体を震わせる。ああ、怒ったなこりゃ。

 と、思った俺だったが。