遊ぶだけなら、もっと手軽であと腐れがない女の子のほうがいい。俺は本気の恋愛なんて求めていないのだ。

 というわけで、嫌われてもらうために麗華をからかうことを俺は決意した。


「麗華さん。例えば俺と君が恋人同士になって、俺が髪を黒くしたりマナーだの英会話講座だのに通ったりするとする」

「ええ、ぜひそうしてちょうだい」


 例えばで言っただけなのに、俺のその言葉が素直になったように見えたらしく、麗華は満足げな顔をする。


「だけど、俺だけが君の言うことを聞く、というのは不公平ではないかな。もし恋人になるんだとしたら、俺の願いも聞いてほしい」


 はっとしたような顔をする麗華。推測だけど、お嬢様である彼女は周囲が自分のお願いを聞いて当然だと思っていたのではないだろうか。

 しかし、由緒正しいお嬢様である麗華は、他人への礼儀を十分に学んでいるはずである。俺の主張が真っ当であることには、すぐに気づいたらしかった。


「確かにそうね。あなたの言う通りだわ。私ができることなら、なんでもするわよ。それで、何が願いなの?」

「……女の子が簡単に何でもするなんて言っちゃダメでしょ」


 俺は少し邪悪な顔で笑って見せた。すると麗華は少し怯えたような面持ちになり、身構える。

「な、何が望みなの?」

「まずはキスして。ここで。ディープなやつね。もちろんそれだけじゃ物足りないから、今夜はその先のことも」


 事も無げに俺は言う。ちょっと急ではあるが、恋人になった女の子に、男が求めてもそんなにおかしいことではないはずだ。