『四月。知らないおじさんがやって来た。

 私のことを助けてくれるらしい。

 治らないからこそ“難病”なのに、変な話――だとは分かっていながら話を聞くと、誰か知らない男の人が、私に命を提供してくれるって話だけれど、そんなこと簡単に信用して良いのだろうか。

 とも思ったけれど。

 やり残したことはある。

 言い残した思いもある。

 夢幻で終るのなら、それでも別に構わない。元より決まっている運命だった訳だし。

 けれども、もし仮に、それを本当に願っても良いのなら。

 どうか、私を一日でも長く、生かしてください。

 これがきっと、最期の日記。

 延びた分の日数は、私の時間じゃないから。

 延命していたら、知らない誰か、本当にありがとう。

 もししていなかったら――うん。それでも、やっぱりありがとうかな。

 どっちにしても、頑張れ私!

 こう言ったら聞こえが悪いけど、私よりも短い人なんて山ほどいるんだ。事故なんかでふとして亡くなる人だって、大勢いる。

 長く生きたいと願うのは当然のことだけれど、それを出来ない身だと分かった以上、残りを悔いのないように生きるのが私!

 良い? へこたれるなんて、許さないから!』