「あ、また新しいメンバー増えたんだ」

 送られてきた最新号をベッドに寝そべりながら見ていれば、新しくドクモとなった子達のプロフィ─ルが載っていた。TEENROSEのドクモは基本的に高校生限定。しかし南のように高校を卒業する前にドクモをやめるケースもあるため、編集部では人数が不足しないようにその都度新しいメンバーを迎えることでバランスを図っている。
 それにしてもこの世の中にはかわいい子が多いなぁなんて考えていれば、ぶるりと枕脇のスマホが震えた。それはわたしの本当の親友、ぴかりんからのメッセージだ。

『もしもわたしが、四十を超えたおじさんだったらどうする?』

 突拍子もない言葉に、わたしは一瞬フリーズする。
 四十? おじさん? ぴかりんが? なになに、どういうこと?

『おじさんなの? ぴかりんが、ってこと?』

 不思議に思いながらもそう返せば、やはり今夜も返信は早い。

『例えばって話だけどね。だって本当は私がどんな人なのかって、ここだけじゃ分からないでしょう?』

 とりあえず彼女はおじさんではないらしい。SNSでの姿と現実世界での姿。その二つの間に相違があることは、わたしだってよく知っている。わたし自身が、そうだったのだから。

『そんなこと言ったら、わたしだって八十越えたおばあちゃんかもしれないよ?』
『それはない』
『ぴかりんってば、なんで言い切れるの? わかんないじゃん!』

 なんの前触れもないぴかりんのおじさん発言とテンポの良い会話は、今夜もわたしをリラックスさせてくれる。しかし、ぴかりんは同じ意味を持つ質問をもう一度繰り返したのだ。

『 もしもわたしが本当に、サリ子が想像する人とかけ離れた人物だったらどう思う?』

 こんな風に彼女が重ねて問いかけてくることは今までに一度もなかった。偽っているわけではないにしろ、ぴかりんには何かひっかかることがあるのかもしれない。わたしは正直に、今の気持ちを指先に乗せていった。

『何も思わないよ。ぴかりんは、ぴかりんだもん』

 これはわたしの本心だ。確かにぴかりんはこうだろうなというイメージはある。料理が好きで明るく元気な女の子。しっかりと自分の意思を持っている、かっこいい女の子。
 でもそれはわたしが勝手に作り出した彼女のイメージだ。もしそうじゃなかったとしても、そんなのは全然気にならない。彼女の言葉に何度も救われてきた、それこそがわたしにとっての事実なのだから。
 もしも万が一、ぴかりんが四十歳を過ぎたおじさんだったとしてもその事実は変わらない。そりゃあもちろん、ふたりで遊ぼう! なんていう流れは不自然なのかもしれないけれど。

『サリ子、それ本心?』
『うん、本当にそう思ってる』
『わたしに会う覚悟はある?』

 それはぴかりんからの、思いがけない提案だった。