翌朝、いつものようにSNSを開くと、自体は思わぬ方向に動いていた。なんと、美香ちゃんのアカウントが炎上していたのだ。一体何があったのだろうかと投稿を遡ったところで、わたしの頭からは一気に血の気が引いていった。

『投票結果が明らかなのに、それだけじゃ分からないのかな?』

 これが原因となった彼女の最初の投稿。これは多分、わたしが色々と言われていることを知った彼女の投稿だったのだろう。
 そこに対して、美香ちゃんは利用されているだけだから目を覚ましてとか、美香ちゃんにプラスになることは何もないだとか、投票結果なんてやらせに決まっているといった言葉たちが投げられていて彼女はそこにひとつひとつ返事をしていた。しかも、歯に衣着せぬ言い方で。

『眠ってなんかいないよ』
『プラスマイナスで人を選ぶような人にはなりたくありません』
『やらせだと思う方はスカイウォ─ク編集部までどうぞ。きちんとした結果をわたくし美香がご案内いたします』

 そして、最後にこう投稿していた。

『わたしの人生なんだから、とやかく言わないでもらってもいい? 何が真実かも知らないくせに、憶測で発言するなんて本当幼い』

 ボオオオオ。山火事勃発。
 その一連の流れをネットで見たわたしは、急いで美香ちゃんにメッセ─ジを打った。どう考えてもこれはわたしが原因だ。どうしよう、彼女の名前に傷がついてしまったかもしれない。

『美香ちゃんごめんね! わたしのせいでこんなことになっちゃって……』

 そう送れば、すぐに返事が返ってきた。どうやら美香ちゃんももう起きていたみたいだ。まさか気に病んでしまって朝まで眠れなかったとか? しかし彼女からの返信は実にあっけらかんとしたものだった。

『おっはよ~! 炎上モデル美香にとってこんなのはなんてことないよ─ん!』

 炎上モデル……? そういえば、と記憶のひもを手繰り寄せる。わたしはSNSデビュ─が遅かったためあまり気にしたことがなかったけれど、美香ちゃんは炎上発言をよくするという話を聞いたことがあったような気がする。
 誰に対しても神対応で優しい美香ちゃん。裏表のない彼女はSNSで向けられた悪意に対しては真っ向から立ち向かっており、時としてそれは炎上という形となることは少なからず今までもあったようだ。しかしその凛とした態度は若い女の子たちにとっては憧れの要素のひとつにもなっているのだろう。炎上ですら、完璧な美香ちゃんを形作る一部になるのだ。

『正直、誰だか分からない相手からの誹謗中傷なんて痛くも痒くも怖くもないよ。言葉でやりあって負ける気もしない。だって明らかにいちゃもんつけてきてるのはあっちなんだもん。嫌なら見なきゃいいだけなのにさ。嫌い嫌いって言いながら気になって見てるのはあなたでしょって思っちゃう』

 さらに美香ちゃんからの言葉は続く。

『露出することが増えれば増えるほど、こういうのも増えていく。もちろん応援してくれる人も増えていくけど、純粋なプラスだけなんてありえない。のんだって、これからこういうことは避けて通れないと思う。だけど傷つく必要なんかないんだからね』

 美香ちゃんは強い。わたしのそばには、美香ちゃんやホイル大佐といった強くてかっこいい人たちがいてくれる。わたしもいつか、ふたりのように強くなれるんだろうか。

『悔しかったら自分もコンテストに出て優勝してみろって話だから!』

 矢継ぎ早に飛んでくる言葉たちは、まるでボクシングの軽快なフックみたいだ。そのメッセ─ジを読んで、思わず笑ってしまう。なんてすがすがしいんだろうこの子は。お人形さんのような容姿にかわいらしい声、明るい笑顔と思いやりを持っている上に強さまで持ち合わせている。こんなの、ますます憧れちゃうに決まっているじゃないか。
 本当に色々だ。ホイル大佐みたいにブロックをして無視するひと、わたしみたいに受け入れることでしか消化のできないひと、美香ちゃんみたいに真正面から戦うひと。物事の解決の仕方には人それぞれの方法があって、確固とした正解なんて、きっとないのかもしれない。