◇
「さむ……」
帰宅してサラダを食べたわたしは、風呂にも入らずベッドの中へと倒れこんだ。どうやらそのまま眠ってしまったらしい。肌寒さを感じて目を開けば、頭までかぶっていたはずの布団がベッドの下に落ちている。もう少し眠ろうと布団をずりあげると、ピコンとスマホが通知音を鳴らした。こんな時間に誰だろう。寝ぼけ眼をこすりながらロックを解除すれば、SNSのペ─ジが現れた。
『サリ子さんへ。たまたま気が向いて描いてみた。良かったらどうぞ』
そんなコメントと、やたらと目が大きすぎるサリーちゃんの似顔絵が画面の上で微笑んでいる。
上部に表示されている時刻は、午前四時。カーテンの隙間からはうっすらと白い空が見え、わたしはもう一度画面へと視線を落とした。
──待って。もしかして、夢じゃない……?
そう思ったのも無理はない。コメントの差出人は、ホイル大佐だったのだから。
わたしは勢いよく飛び起きると、何度も何度もその画面を再読込して確認をする。こんなことは初めてのことだ。ホイル大佐とわたしはコメントのやりとりこそするものの、彼はわたしのことをフォローしていない。つまり、わたしの投稿が彼の視界に自然と入るということはありえないのだ。だからこそ今までのやりとりは、ホイル大佐が投稿したものに対してわたしがコメントをし、そこでやりとりが生まれるという形だった。
しかし、このコメントとイラストはわたしの投稿に対して送られてきたものだ。にわかには信じられなかった。だって、ホイル大佐には一万人を超えるフォロワーがいて、わたしはそのうちのひとりでしかなくて──もちろん本人は、サリ子が隣の席の花室野々花だってことには気づいていないはずで。そんなわたしに、彼が絵を描いてくれたなんて。
ふと、彼がコメントしてくれていた自分の投稿が目に入る。
『さみしい。悲しい。虚しい。なにが正解か分からない』
もしかしたら彼はこの言葉を偶然見て、心配をしてくれたのかもしれない。よく見れば、描かれたサリーちゃんは吹き出しで何かを言っている。小さな文字だから、拡大しないとよく見えない。人差し指と親指でひろげてみればそこには──
『明けない夜はない!』
そんな言葉が書かれていて、思わずわたしは枕に顔を埋めて泣いたのだった。
「さむ……」
帰宅してサラダを食べたわたしは、風呂にも入らずベッドの中へと倒れこんだ。どうやらそのまま眠ってしまったらしい。肌寒さを感じて目を開けば、頭までかぶっていたはずの布団がベッドの下に落ちている。もう少し眠ろうと布団をずりあげると、ピコンとスマホが通知音を鳴らした。こんな時間に誰だろう。寝ぼけ眼をこすりながらロックを解除すれば、SNSのペ─ジが現れた。
『サリ子さんへ。たまたま気が向いて描いてみた。良かったらどうぞ』
そんなコメントと、やたらと目が大きすぎるサリーちゃんの似顔絵が画面の上で微笑んでいる。
上部に表示されている時刻は、午前四時。カーテンの隙間からはうっすらと白い空が見え、わたしはもう一度画面へと視線を落とした。
──待って。もしかして、夢じゃない……?
そう思ったのも無理はない。コメントの差出人は、ホイル大佐だったのだから。
わたしは勢いよく飛び起きると、何度も何度もその画面を再読込して確認をする。こんなことは初めてのことだ。ホイル大佐とわたしはコメントのやりとりこそするものの、彼はわたしのことをフォローしていない。つまり、わたしの投稿が彼の視界に自然と入るということはありえないのだ。だからこそ今までのやりとりは、ホイル大佐が投稿したものに対してわたしがコメントをし、そこでやりとりが生まれるという形だった。
しかし、このコメントとイラストはわたしの投稿に対して送られてきたものだ。にわかには信じられなかった。だって、ホイル大佐には一万人を超えるフォロワーがいて、わたしはそのうちのひとりでしかなくて──もちろん本人は、サリ子が隣の席の花室野々花だってことには気づいていないはずで。そんなわたしに、彼が絵を描いてくれたなんて。
ふと、彼がコメントしてくれていた自分の投稿が目に入る。
『さみしい。悲しい。虚しい。なにが正解か分からない』
もしかしたら彼はこの言葉を偶然見て、心配をしてくれたのかもしれない。よく見れば、描かれたサリーちゃんは吹き出しで何かを言っている。小さな文字だから、拡大しないとよく見えない。人差し指と親指でひろげてみればそこには──
『明けない夜はない!』
そんな言葉が書かれていて、思わずわたしは枕に顔を埋めて泣いたのだった。