物語も終盤、毒林檎を食べてしまった白雪姫は命を落としてしまう。小人達が白雪姫の死に嘆く中、そこに通りかかる白馬に乗った王子様が白雪姫を見て彼女に一目惚れする。

 王子様は悲しみに暮れる中、彼女の薄く開いた唇にそっと口づけを落とした。
 そして奇跡が起こる。王子様からのキスで、白雪姫は奇跡的に息を吹き返したのだ。そして、命を助けてくれた恩もあり、二人はお城でめでたくパッピーエンドを迎えるのでした――。




 意識が半分虚ろだ。けど、どうにかストーリーは最後まで読み終わった。何回も寝そうになったけど、本当によくやったと思う。
 いつもなら睡魔が襲ってきたらあっさりポックリなんだもん。

 時刻はもう夕飯の支度時、窓から見える茜色の空は、少しづつその色を濃く熟していく。外から聞こえてくる子供たちの笑い声やカラスの鳴き声が、ぼうとした頭に心地よく響いてより一層眠気を誘った。

 これもあのスパルタ講師の指導の賜物だろうか。和解の日から図書室でたまに勉強を見てもらっているが、あの鬼畜の所業は人間のやることではない。何度も猫ちゃんに泣きついた。答えを間違える度に、ハリセンで頭をすっ叩くのはいただけない。


 手の中の白雪姫の本に視線を落とせば、ラストシーンで二人が幸せになる内容がそこには綴られていた。

 キスで白雪姫を目覚めさせた王子様か……まるでキスの魔法みたいだ。
 それはなんだか高雅さんとよく似ているような……あの高雅さんと物語の王子様が似ているなんて何の冗談。さすがに無理がある。




 本を閉じて枯れた声を漏らす音は次第に小さくなり、やがて微かな寝息を立てていた。