冷蔵庫から硝子の器に入れられた唐揚げを取り出し、電子レンジへ入れ、つまみを回してがしゃんとボタンを押す。冷蔵庫から出してすぐに電子レンジで温めるというのを繰り返した皿にひびが入っているのに気づいたことがあるが、急激な温度差が理由であったりするのだろうか。

　保温時間が一時間に満たない炊飯器の蓋を開け、ご飯を茶碗によそって保温を切る。パッケージに「おかか」の文字があるふりかけをご飯にかけ、ラップ越しに適当に握る。

　握り飯と温まった唐揚げを手に居間へ入り、食器を座卓へ並べる。テレビを点けると昼の情報番組が流れた。芸能人がなにをしただ、仕事場がネット上に留まらない人気者が紹介した商品が売れているだ、政治の世界では引き続きこの内容について審議が行われているだと、情報番組は毎日忙しい。いずれもわたしとは距離のある内容だが、そんな情報で賑わっている世界も悪くないかもしれない。

ナオさんも似たことを言っていたが、自分の人生が大きく変わりうる内容で持ち切りの世界など、確かに、神経が興奮して、落ち落ち食事も睡眠もとれたものじゃない。もう少しふりかけを多く使った方がよかっただろうかなどと考えながら、唐揚げをおかずにおかかおにぎりを食せるくらいの世界の方が生きやすい。

近所ではこうした番組に取り上げられるほどの物騒な出来事も起きておらず、なにも警戒せずに外出できる。今警戒すべきことと言えば、脱水やら熱中症くらいだ。今日も各地で猛暑日となることが予想されるという。外出先で涼を取るのに、いよいよバーアイスが向かなくなってきた。わたしのような冷たいものを早く消費できない者の手に渡ったそれの場合はなおのことだ。