呼吸がだんだんと浅くなり、瀬名先輩は自分の心臓付近の服を右手で握りしめていた。額には大量の汗がつたっている。
 もしかして……火を見て過去のことがフラッシュバックしているのだろうか。
「瀬名先輩……、目を覚まして!!」
 大声で叫ぶと、瀬名先輩はハッとしたように目を見開き、今度は私の名前を読んだ。
「琴音、危ない!!」
 ななめうしろを振り返ると、焼かれて崩れ落ちた本棚が、目の前まで迫っていた。
 まさかこんな形で、明日が来なくなるかもしれないなんて。
 私は、心の中で「ごめんね、先輩」と唱えながら、目を閉じた。