勝負が始まった。

ライアンが先に斬りかかった。
エズフがそれを剣で受け止めた。
そして、エズフが押し返した。
「ふーん、ちょっとは力つけたんだな。」
ライアンは今までのエズフではないと気がついた。
「毎日、剣術の鍛練してるからな!」
「ウソだろ!?あのエズフが!?」
ライアンは驚いた。
そして、ギャラリーも驚いた。
「そこまで驚かなくてもいいだろ!!」
エズフは恥ずかしいのと腹が立つのとで複雑な気持ちになった。
「あのやる気がないエズフが毎日、剣術の鍛練してるなんて驚かない方がムリだろ!!」
ライアンに言い返されたが、それも仕方がないこと。
エズフは宮廷騎士の中でもやる気がないと評判の騎士だからだ。
なぜやる気がないかというと、エズフは宮廷騎士になりたくてなったわけではないからである。
たまたま、宮廷騎士の試験を受けて、採用されただけだ。



エズフの当時を振り返る。

「エズフ、やりたい仕事決まったの?」
「まだだよ。」
「そうなのね……。やりたいこと何かないの?」
「特にないよ。」
「じゃあ、こんなのはどう?」
エズフの母が見せたのは一枚のチラシだった。
そこには『宮廷騎士募集!!』と書かれていた。
「どう?」
「それって縁故関係で入ったり、貴族が採用されたり、金持ちが採用されたりするんじゃないの?」
「面接と実技試験と筆記試験をみんな受けないといけないのよ。
そして、その試験で成績が良かった人が採用されるわけだから平等にできてるんじゃないの?
エズフも受けてみたらいいじゃない。」
「……まあ別に受けてもいいけどさ、どうやって試験の勉強するの?」
「本屋さん行ったら宮廷騎士の参考書が売っているわよ。」
「でも、実技試験はどうするんだよ?」
「実技試験の参考書もあるんじゃないの?知らないけど。」
「じゃあ、試しに受けてみようかな。参考書、買ってくるわー!」

という感じである。
そして、筆記試験も参考書で勉強をし、実技試験も参考書に絵図付きで載っていたので見よう見まねで剣術の勉強をし、なんと採用されたのである。

最初は採用されるとは思っていなかったから嬉しかったが、宮廷騎士は思ったより大変だった。
しかし、他の貴族だったり、金持ちだったり、縁故関係で入った人達はプライドというものがあるのか、色々しがらみがあるのかしれないが頑張っていた。
そして、エズフはあまり頑張らなかった。