次の日の放課後、私は自主的にとある部屋の前に立っていた。
 黒く分厚いカーテンで遮られた光。人気の少ない廊下。
 すうっと大きく息を吸い、深く長く吐き出す。手がほんのり冷たくなって震えていた。どくどくと心臓が脈を打つ。
 それでも私は腕を持ち上げた。やめようと脳が選択する前に叩いてしまおうと思った。
 日彩だって頑張ってるんだ。日彩に出来るのだから、同じ血が流れている私にだってできるはず。やる前から諦めるな私ーー。
 目をきゅっと瞑り、扉を三回叩いた。見本のように軽い音が弾ける。だが、カーテンに吸収されてしまったのか、中からは反応がなかった。聞こえなかったのかと思い、扉の前でそわそわとする。もう諦めて帰ろうかと思った時、廊下の向こう側から三本の影が現れた。
「あれ! 前田さんじゃないっすか!」
 逆光で真っ黒な三本柱は、顔が見えなくとも誰がどれだかよくわかる。やっと顔のパーツがはっきりと見えるほど近づいてくると、両端に比べて高さが少し窪んでいる一人が、小走りに前に出てきた。
「大丈夫か? あれから何かあった?」
 自主的にこの場に訪れることは、相手からすればかなり珍しいと思うに違いない。ほんの少し覗き込むような姿勢で尋ねる上原くんに、先日会った時の出来事を思い出して安心感が生まれたのか、私は素直に思いを口にすることができた。
「何かあったってほどではないけど、日彩のことで相談があって……」
 すると上原くんは何かを察したようで「とりあえず中に入ろう」と促してくれた。吉岡くんと大賀くんは省いたほうが良いかと尋ねられたが、今日の目的を果たすには必要であると判断したため、大丈夫だと断りを入れる。上原くんは面食らったような表情をしていたが、正直短期間でここまで成長している自分に、私が一番驚いていた。
 部室の鍵を開け中に入ると、黒いカーテンに覆われているせいで何も見えない。次に大賀君が入り、手探りをすることなくパチンと扉横のスイッチを押して天井の蛍光灯が点いた。以前来た時と変わらず、質のよさそうな機材が沢山並べられている。全員が入室したところで、上原くんが椅子を四つ引っ張り出すと、吉岡くんが一日の疲れを全身で表現するようにだらりと体を預けて座った。それを気に留める様子もなく、上原くんは私の名を呼び、ここに座れと言葉なく椅子に手の平を向ける。やはり男子三人と密室にいることにはまだ慣れなかったが、友達に相談するのだと心の中で繰り返し唱えることで少し落ち着いた。
「前田さん、どうかしたんすか?」
 大賀くんと上原くんも席に着くと、吉岡くんが開口一番にそう言って話を持って行ってくれた。
 正直、視線が集中することが辛かった。でも少しだけ、ほんの少し勇気を出して逃げないでみよう。私のためにも、日彩のためにも。
「実は……」
 そう思って、私は口を開いた。この前一緒に映画を見に行った妹が、ギラン・バレー症候群という病で入院し、卒業式に出ることができないことから、完全に塞ぎ込んでしまったと。そして病名を知った日の帰宅後に、この病気について調べた内容も説明した。
 ギラン・バレー症候群とは、全身の神経に炎症が起きる急性の病気で、難病に指定されているもの。
 その症状は、まず初めに風邪や下痢などの感染が起こり、その一から四週間後に手足先の筋肉に筋力低下が出現する。しびれ感などの感覚障害も出現するが、多くの場合、筋力低下が目立つ。両下肢から始まって両上肢にも拡がり、一から二週間でピークに達する。軽症例から重症例まで様々だが、重症例では物を飲み込めない嚥下障害や呼吸障害も出現し、致命的になる。
 この文章を読んだ時、私はあの時の恐怖を思い出し、手にじわりと冷たい汗が滲み出た。もしかすると、もう少し救急車が遅ければ、日彩は呼吸困難が命取りとなってーー。
 考えたくもなくて、私は部屋で一人、(かぶり)を振った。現に日彩は生きている。無駄に嫌な想像をする必要などないじゃないかと。
 でも、考えれば考えるほど、今後そのような結果になってしまうのでは無いかと思えて、怖くなった。それを必死に打ち消そうと、また指を動かす。
 顔面神経麻痺や眼球運動障害などの脳神経障害、不整脈や腸閉塞などの自律神経障害を合併する場合もあり、重症例ほど頻度が高くなる。四週を過ぎると徐々に改善するが、後遺症が残る場合もあり、二から五パーセントで再発がみられるのだ。
 有病率は十万人あたり一人から二人ほどで、いずれの年齢層にも発症する可能性があり、やや男性に多い傾向がある事も、この時初めて知った。
『ギラン・バレー症候群の原因として挙げられるのは、細菌やウイルスの感染です』
 その時、何か思い当たる節がある気がした。見えない追っ手から本能的に逃れようと、視界の悪い森の中を息を上げて駆け抜けるような感覚に囚われながら、スクロールを続ける。
『本来は細菌やウイルスを攻撃するはずの免疫である抗体が、まれに自分の神経を誤って攻撃してしまい、そのために炎症が起きるのがギラン・バレー症候群です』
 その下に記されていた症例の一つに、カンピロバクターという食中毒菌が原因だったと考えられるものがあった。カンピロバクターは、主に家畜などの腸管に広く存在しており、特に鶏の保菌率が高く、不十分な加熱のものを食べた場合はカンピロバクター感染症になることが多いのだと。
 カンピロバクター感染症になると、腹痛、下痢、嘔吐、発熱を主な症状として、まれに血便を生じることもある。その合併症として、下痢後、一から三週間後にギラン・バレー症候群を起こすことがあるらしい。
 思わず画面から目を背けたくなった。あの時だ。私があの三人と映画を見に行った時、彼女が食べていたのはチキンステーキだった。
 確証はない。でも、もしあの時連れて行かなければ……あの時、別のものを頼もうと言っていれば、こんなことにはならなかったのかもしれない。そう思うと、真っ黒な罪悪感のベールに包まれる。
 治療には、これから長い期間をかけてリハビリを続けなければならないらしい。完治するかもわからない、後遺症が残るかもしれない、いつリハビリから解放されるのかも各々で変わってくるためわからないと、そこには記されていた。
 そんな大変な病気の原因を、私が作ってしまった可能性があるだなんて。どうしたらこの罪を償えるだろう。ただ可哀想だと見ているだけでは駄目だ。私が何か動かなければ。罪滅ぼしの意味でもーー。
 たどたどしく、わかりにくくもあったと思う。考えられる原因については、誘ったことに対して彼らが罪悪感を抱くかもしれないため伏せておいたけれど、それ以外の事について、三人は長い間耳を傾け続けてくれた。
「だから、日彩を元気づけたいの。どうしたらいいか、何かいいアドバイスを貰えないか相談したくて……」
 ちらりと見回すと、均等に隙間を空けて座った椅子の上で、彼らはうーんと腕を組んだり、眼鏡をいじって真剣に考えてくれる。
「永遠が何をしても、喜んではくれそうだけどな」
 上原くんが独り言のように呟いた。吉岡くんと大賀くんも、それに同意を示すように頷く。
「確かに日彩なら何をしても喜んではくれるのかもしれないけど、私は喜んでほしいというより、少しでも元気になって心から笑ってほしいの」
 私の素直な思いだった。そう話すと、また重苦しい空気が広がり、皆それぞれ視線を散らす。
 自分でもかなり厄介な頼みごとをしていると思う。上原くんの意見に反論してしまった形に対し罪悪感を持ちながらも、これでいいのだと自分に言い聞かせる。ここで素直に自分の思いを口にできなければ、何も変われないし、日彩のためにもならない。心の中で上原くんに謝りつつ、私は黙って考え込む三人の表情を見つめた。
 すると、如何にも名案が浮かんだというような表情で、吉岡くんが「あ!」と声を上げた。
「卒業式を挙げたらどうっすか! 日彩ちゃんが一番求めているのは卒業式なんすよね?」
 あぁなるほど、と一瞬納得しかけたが、間髪入れずに横から微笑混じりのため息が聞こえてきた。
「吉岡、話聞いてた? その卒業式ができないんだよ。仮にやるとして、どうやって病人を連れていくんだ。普通に考えて厳しいだろ」
 大賀くんが諭すように淡々と述べる。
 でも、両者共に尤もだ。日彩が一番悲しんでいる原因は恐らく卒業式。それをすることが彼女にとって最も喜んでもらえることだが、入院する必要のある人をどうして連れ出せようか。それに、彼女は式自体をしたいわけじゃない。大切な友達と、三年間過ごした大事な場所で、最後の思い出を作りたいのだろう。だから、式当日に私たちだけで祝われても、逆に辛くなってしまうかもしれない。もし実行したとしても、日彩は嬉しそうな表情を作りはするだろうけれど。
「そうだけどさ、後日仲の良い友達だけ集まってもらうだとか、もしくは他に何か案を探してでも、卒業式らしきことをしてあげたいじゃん! 日彩ちゃんが一番望んでいることをしたいし、何よりその方が日彩ちゃんも元気になれると思うんだよ。絶対何かいい方法があるって!」
 いつもに増して、吉岡くんが熱く語る。それを見た大賀くんは、反論することもなく、足元に視線を落として再び押し黙った。
 私も同じように手元に視線を落とす。何だか現実味を帯びてきた気がして、背中がずんと重くなった。
 吉岡くんの言う通り、日彩が元気になるためにも卒業式を挙げてあげたい。でも、そんなことどうしたらできるのだろう。何かいい案なんて、浮かぶのだろうか。そもそも私には、例え規模が小さなものでも挙行できる自信がない。
 やはり、ただ私が日彩に簡単なプレゼントでもする方が、一時的にでも喜んでくれて、かつ現実的なのだろうかと諦めそうになった。
「できるかもしれない」
 しんとした中で発せられた言葉に反応するように、私たちは顔を上げる。一筋の光を見出したかのようなその回答をしたのは、向かいに座る上原くんだった。
「でも、できないかもしれない」
 一瞬で打ち砕かれた希望に、思わず大賀くんが「どっちだよ」と笑う。それでも上原くんは真剣な眼差しで、組んでいた腕を降ろし、私と目を合わせた。
「何をするにしても、できるかできないか今はわからない。方法によってはできないこともできるようになるかもしれない。できるかできないか、それは一旦置いといて、永遠がしたいかどうかを大切にすればいいんじゃないか?」
 胸の奥の何かが、その言葉に引き寄せられた気がした。上靴が床に擦れながら、椅子の下に隠れる。無意識に膝の上のスカートを握りしめていた。
「最初から無理だと思って行動しなければ、可能性はゼロだ。でも無理かもしれないと思っても、挑戦すれば可能性はゼロじゃなくなる。諦めなければ、一パーセントの可能性が味方になってくれる。大事なのは、永遠がやりたいか、やりたくないかだ」
 眼鏡のレンズを挟んで見つめるその瞳は真っ直ぐで、言葉の一つ一つに彼の思いが込められているとわかる。
 私がやりたいか、やりたくないか。私は日彩に何をしたいと思った? 日彩のために、私に何ができるかでなく、私がしたいこと。
「卒業式、してあげたい。……ううん、したい」
 夜明け前の真っ暗な森の中で、朝日とともに霧が晴れていくような心地だった。そうだ、最初からできることを探すより、自分の思いや、何を目的としているのかが一番大事なんだ。
 吉岡くんが立ち上がり、「上原いいこと言った!」と拍手をする。少し恥ずかしかったのか、「やめろ」とじゃれ合う二人が、何だか微笑ましかった。
「前田さんがそう言うのなら反対はしないけど、でもどうやって?」
 冷静に物事を考える大賀くんが、現実に引き戻す。でも、一つ前に進んだ。
「まずは理想と目的を整理して考えよう」
 上原くんが、隅に置かれていた一つの机を引っ張り出し、円となった四人の真ん中に向けて滑らせる。その上に鞄から取り出した一枚のルーズリーフと筆箱を置き、右手でカチカチと二回シャーペンの頭を親指の腹で叩いた。
「まず理想からだ。永遠の妹は卒業式がしたい。でも出来ない。だから代替の式をする。でもそれはただの式ではなくて、友達と一緒に話せる環境で。指揮者もしてたから、皆の前に立って指揮もしたかったはずだ。卒業証書も先生から受け取りたいと思う。さてこの理想を叶えるにはどうしたらいい?」
 吉岡くんがわざとらしく「うーん」と声を漏らす。上原くんは先程自分が並べた理想を書き出して、テストの採点をするようにそれらを大きく丸で囲んだ。
「無理だと思うけど、俺はその場に連れて行くくらいしか思いつかないな」
 暫くの間があった後、そう言って大賀くんが沈黙を割く。なるほどと言わんばかりに上原くんが手を動かそうとすると、遮るように横から明るい声が飛んできた。
「あ、じゃあ中継とかは! ライブ配信!」
 目を大きく開け、右手の人差し指を上原くんに向けた吉岡くんが言う。現代らしい新たな発想に、私も思わず凄いと口に出しかけた。残念ながら、それは喉の中で捻られ、空気となって鼻から抜けてしまったけれど。
「あぁいいな。でも一方的に見るだけじゃ、虚しくならないか?」
 人差し指を払い除けることなく、上原くんはそう言ってルーズリーフに向かい合う。
 私も置いていかれまいと、手を顎に当てて考えた。
「うーん。じゃあ双方見えるようにするとか! パスワード掛けて、他の人には見えないようにした配信をお互い立ち上げて!」
 吉岡くんは輝かしい瞳で私と大賀くんを順に見つめる。天井目掛けて伸びた短髪が、彼の動きによって発生した風で揺られた。
「学校側なら、卒業式が終わった後にでもスクリーンにでも映してもらえるかもな。式中は正直誰も会話はしないだろうし。まあ、永遠の妹が嫌がったら話は別だけど、双方見えるようにするとして、病院だどどこに映すんだ? 手元のパソコンだけだと小さくないか?」
 贅沢な悩みにもなりうるが、上原くんが言うことも一理ある。何なら学校側が大きなスクリーンで日彩を映すよりも、日彩が学校にいるような感覚になれるくらい大きな画面で見れる方が良い。
 そう、その場にいるような感覚にーー。
「あ……」
 私の言葉に、三人が一斉にこちらを向いた。私は発言を撤回するように、慌てて手を浮かせる。
 でも、皆の視線は責めるようなものではなく、寧ろ優しく受け止めてくれるような眼差しだった。
 無謀だと言われることも覚悟したけれど、この人達を信じることも、私には必要だ。
 そう思い、私は浮いた手を握り潰して膝に落とした。
「その……VRを使うなんてどうかな。見る側はゴーグルを着けるだけで良いから場所も取らないし、その場にいるような感覚になれると思うの」
 言葉が喉を超えた。何と否定されるか少し怖くて、三人を順に見つめる。でも、そんな心配はいらなかったように、吉岡くんの表情が一変して明るくなった。
「それ名案っす! 三六〇度カメラを使って、その場にいるような感覚とか最強じゃないっすか!」
 興奮気味の回答に、強ばった肩が少し緩くなる。机の上で紙を擦る音が少し速くなった。
「なら機材の調整は任せて。確か、少し上の先輩が使ったらしい三六〇カメラが部室にあるって聞いた事あるから、探してパソコンに繋いでみるよ」
「うわ! 大賀心強い!」
 まさか、そんなものまで部室にあるとは思わず、一筋の希望の光が差してきた気がした。機械関係に強い大賀くんなら、カメラやパソコンのことを任せても大丈夫だろう。
 そんな事を考えていると、からんとペンが机に放られる音がして、空気の流れが変わった。
「でも待て、色々飛ばして考えてたけど、そもそもライブ配信ってことはその場にカメラマンが必要だよな? かつ三六〇度カメラを使ってその場にいるようにするには、カメラマンが永遠の妹の代わりに卒業式に出席する必要があるわけで、その許可を取らねぇといけなくないか?」
 はたと気付いたように、再び三人が黙る。吉岡くんがうーんと唸りながら、円になった椅子の周りを歩いて回り始めた。
 一歩一歩が時間を刻むように、上靴が床から離れ、また触れる音がする。
「私が頑張って交渉する」
 吉岡くんの足音が止まり、三人はまた一斉に私の方を向いた。
「え、本当か? 大丈夫か?」
 上原くんが心配そうに私の顔を覗き込む。その表情を見ると、やはり自分には無理かもしれないという思いが湧き上がり、一瞬首を縦に振ることを躊躇った。しかし、すぐに日彩のことを思い出し、ぎゅっと手に力を込めて言葉を放つ。
「大丈夫……じゃないけど、日彩のために頑張りたいから」
 そうだ。こんなことで負けていられない。自分のためにも、日彩のためにも、私は私を変えてみたいと思ったのだ。
 私の言葉を聞いた大賀くんと吉岡くんは、まだ不安気な表情を残していたが、上原くんだけはすぐにふっと口角を上げる。
「そうか。じゃあ俺も手伝うから。あんまり一人で抱え込むなよ」
 私のことを信じてくれている。何かあれば自分が支えればいい。
 そんな風に思ってくれている気がして、私は胸が熱くなった。
「ありがとう……。どうして皆、こんなにも真剣に向き合ってくれるの? 私部員でもないのに……」
 どうしてこんなにも優しくしてくれるのか、わからなかった。上原くんはまだしも、大賀くんや吉岡くんにとって私は全く関係の無い他人であり、しかも今回はそんな私の妹に関してのことだ。
 ライブ中継も、実現させることはきっと困難なことであり面倒なことだろう。それでもやろうとする理由なんてないはずだ。
 三人は一瞬顔を合わせ、そしてまた私の方へと視線を戻した。
「友達だろ」
 さも当たり前かのように、上原くんがそう言った。眉が一瞬上にあがり、視界が広がる感覚を覚える。
 それに続き、残りの二人も何度も頷いた。
「そうっすよ! それに日彩ちゃんのことも知ってるから尚更っす!」
「例え部員でも友達でなかったとしても、困ってる人の支えになりたいと思うのは普通じゃないかな」
 彼らの一言一言に胸が締め付けられるようだった。ぎゅっと胸元を掴み、思わず視線を下に逸らしてしまう。嫌だからとか、ネガティブな思考に陥ったのではなく、喜び溢れている表情を見られることが恥ずかしかったのだ。
 友達。彼らにとって私は友達なのだ。そう思っていてくれたことが嬉しくて堪らない。こんなにも喜んでしまっている自分を知り、私がずっと求めていたものはこれだったのかもしれないと、この時強く思ってならなかった。
「皆ありがとう。本当にありがとう……」
 声は震えていた。涙で安定しない声だったが、必死でそう伝えた。伝えなくてはならないと、否、伝えたいと思ったから。
 三人もどこか気恥しそうにお互いの顔を見合わせているようだった。
「さ、時間が無い。もう少し具体的に話し合いを進めていこう」
 こうして私たちは、卒業プロジェクトに向けて動き出した。