初めて結衣を好きになったのは、中学のときだった。

 放課後の美術室。
 無意識に彼女を目で追っていたら、千尋に指摘され、自分の気持ちに気がついた。


『お前さー。見すぎ。白坂のこと』
『……え?』


 呆れた目つきの千尋にそう言われるまで、それが恋愛感情だとは全く意識していなかった。

 目が合っただけで嬉しいとか。
 彼女が何を好きなのか、とか。
 ほんの些細なことが、いちいち気になっていた。


 二度目は、結衣からバレンタインのプレゼントをもらったときに。

 一度、中学卒業前にした告白を断られてから、彼女への気持ちに蓋をしていた。
 結衣を好きだと思う気持ちを、自分の中から消していたつもりだったのに。
 彼女に笑顔を向けられ、会話をするうちに、そばにいたいと思う気持ちがまた生まれていた。


 そして今日、半日一緒に過ごして、前よりも彼女のことを好きになったと自覚させられた。


 もっと笑顔が見たい。
 もっとそばにいて支えたい。
 自分のことを見てほしい――。

 数えあげれば、キリがない欲望。