そういえば最近、妙な出来事が多い。
蓮先輩に、中学のときに私が作ったチーズケーキを一緒に食べたことがあると指摘され、私は全く覚えていなかった。
中学のときは、先輩とはそこまで親しくなかったはずなのに。
沢本君には『何で、いつもいつも……同じ男を好きになるんだ?』と身に覚えのないことを言われた。
先輩を好きになったのは、今回が初めてのはずなのに……。
思い当たるふしがいくつもあり、真鳥の言葉が真実なのではと受け止めるしかなかった。
「記憶って……、何の記憶を消したの? ねえ、本当の話なら、詳しく教えて?」
不安になった私は、彼にすがりつくように尋ねた。
自分が全く覚えていない過去を、真鳥は何もかも知っている?
「そんなに自分の過去が知りたい? ある程度、今が幸せなら、それでいいんじゃないのか?」
「でも……知りたい」
自分だけが知らないままなんて、嫌だ。
「せっかく忘れることができたのに。また思い出したいなんて言ってくるとはね」
呆れたように首を振った真鳥。
黒髪がサラサラと揺れる。