感情の読めない冷めた目をした真鳥は、私の様子に気づき首を傾げたものの、すぐに背を向け歩き去る。


 蓮先輩の手はもう繋がれる素振りはなく、私の手はただ冷たい風に晒されるだけ。

 いくら衝撃的なシーンに驚いたとはいえ、先輩の手を振りほどいてしまうなんて……。
 後悔しても遅い。


 そのあと、先輩とは目を合わせられず。少し距離を置きうつむきがちに歩いていた。
 目が合ったら、またあの映像が頭に浮かんできそうで。
 夢か現実かもわからないキスだとしても、蓮先輩に知られたらと思うと、怖くてたまらなかった。



「白坂さん! オオカミ、たくさんいるよ」
「えっ、本当?」


 オオカミの森で合流した椎名さんや未琴と会話をし、必死に残像を振り払う。

 あの映像が、ただの幻影だったらいいのに。

 そう祈るしかなかった。