外に出て、動物園がよく見渡せる眺めの良い場所に着いた私たちは、二人でスケッチブックを広げていた。

 すっかり未琴たちとはぐれてしまったので、あまり歩き回るよりはと、ベンチに座り風景画を描いている。

 先輩の隣でただ、のんびりとスケッチをしているだけなのに。
 こんな幸せがあっていいのかなと、少し不安になった。


「その構図、いいですね」


 空を背景にしたラフな絵なのに、幻想的でずっと眺めていたい気分にさせられる。


「構図って、私には難しくて。蓮先輩みたいに、いつもセンス良く描けたらいいんですけど」


 写真を一枚撮影するのだって、センスのある人とない人がいるように。
 先輩と私は、根本的に何かが違っていた。


「そう? 僕は結衣の描く絵が好きだよ。繊細で、優しくて。結衣の純粋な部分が絵に出てると思う」
「……ありがとうございます」


 ストレートに褒められると、返答に困ってしまう。