「すごい……のかな」


 私の言った言葉を反芻し、椎名さんはうつむく。


「結局、何もかも中途半端で。何が一番自分に向いているのか、わからない。努力しても、上にはもっと上がいるからね」


 彼女の短めの髪が、冷たい風で微かに揺れる。
 自信があるように見えても、悩みごとは尽きないのだと気づかされた。


「一番になれなかったとしても。授業でバレーの試合をしてた椎名さんのこと見かけたとき。楽しそうで、ずっと見ていたいなって思ったよ」


 何か悩みを持っている彼女を少しでも元気づけたくて。私は自然と言葉を紡いでいた。


「私にとっては――あのとき、一番輝いてた」


 誰よりも真っ直ぐな瞳で。
 自分のことだけでなく、チームの皆に気を配って。
 真剣に試合を楽しんでいた。


「……なんて。ちょっと恥ずかしいこと言っちゃったね」


 照れ隠しにそう付け足すと、椎名さんは白い歯を見せて笑ってくれた。


「ありがとう、嬉しい。こんな風に面と向かって言われたの初めてだから」