未琴と千尋先輩のやり取りに苦笑いしながら、柏木先輩が口を開く。
「小学生のときに。友達の影響で、家でも『俺』と言ったら。家族中から雷を落とされて、テレビを見るのが一週間禁止になったんだ。それからはずっと守ってる」
「……そんなに厳しいんですね、先輩の家」
思えば、柏木先輩は常に育ちの良さがにじみ出ていて、暑いとき以外でネクタイを緩めているところを見たことがなかった。
それも全部、家の人の言いつけを守っているから?
「何だか……窮屈じゃないですか? 家族の言うとおりにばかりしていたら」
つい、言ってはいけないと思いつつも、私の口から本音が零れていた。
「うん……だけどもう慣れてきたし。交換条件を使う知恵もついてきたから大丈夫」
「そう、ですか……」
いつも親の言うとおりにしていて、苦しくなってこないのだろうか。
私なら、いつか我慢の限界になって爆発しそう。
先輩が壊れてしまわないか、なんだか少し心配になってしまった。