動揺とは無縁の、落ち着いた横顔を見つめていると。
 その肩越しに――通路を挟んだ真横の席にいる真鳥と目が合い、パッと視線をそらした。

 何だろう……、あまり好意的な目つきではなかった気がする。

 真鳥は何事もなかった様子で、窓際に座る椎名さんと仲良く話し始め、私は柏木先輩の陰に隠れるように体を縮めた。
 ちょっとだけ苦手なタイプかも。クールな雰囲気で、何を考えているのか読みづらい。
 鋭くて冷めた瞳。それが私へ向けられるたび、見張られているようにも感じてしまう。


「白坂さん、家の人は大丈夫だった? 遠出、心配されなかった?」


 すぐ近くから柏木先輩に話しかけられて、それだけでいつもの数倍緊張する。


「は、はい。大丈夫でした」
「それなら良かった。遠いから反対されてないかなと思って」


 安心したように柔らかな笑顔を見せるので、思わず目をそらしてしまう。
 さっきの真鳥とは違った意味で。