中3と高1で先輩と離れ離れになった一年間。心の奥底に先輩の存在があったから、他に好きな人はできなかった。

 中学のときはたぶん、憧れだけだったのだと思う。
 先輩が彼女と別れて、一緒に部活をする中で、好きな気持ちが一層溢れ出してきていた。

 前よりもっと、先輩のことが好き。
 ほんの少しでいいから、先輩へ気持ちが届きますように。


 いよいよ自分の番がやってきて、緊張が最高潮に達していた。
 気持ちがばれないように、さりげなく渡さなきゃ。


 立て掛けたイーゼルに真っ白なキャンバスを置き、筆を握る柏木先輩。
 今は校庭の風景画を描いている途中のようだった。

 私はそっと彼の隣に立ち、話しかける。


「柏木先輩」
「……何?」


 筆を止めた先輩は、優しく私へ視線を向ける。


「あの、私。中学のときから先輩の絵が……、好きでした」


 言い切ったあと、心臓の音が激しく鳴っていることに気づいた。


「僕の、絵が……?」


 先輩は微かに目を見開き、不思議そうに首を傾げる。


「良かったら、これ、受け取ってください」


 プレゼントを差し出す手が震える。先輩に、気づかれていないといいけれど。