目を開けたら、沢本君の姿はどこかに消えていた。
 ホッとして先輩を見上げれば、心配そうな瞳と視線が絡まる。


「あっ……、ごめんなさい、私」


 傘の下で肩を抱かれていたままだった。慌てて距離を取ると、スッと腕が離れていく。


「顔色が良くないけど、何か辛いことでも思い出した?」


 言い当てられ、そっと視線をはずす。


「いえ、大丈夫です。……少し、頭が痛くなって」
「そう……。帰ったらゆっくり休んだ方がいいよ」
「はい」


 おとなしく返事をしながら思う。
 あの映像は何だったのか……。

 沢本君の制服が、ベージュではなく黒だったから。中学のときの忘れていた記憶かもしれない。

 それともただの、いつか見た怖い夢?


「白坂さん」


 私と向かい合った先輩は、傘を持っていない方の手で私の手を優しく掴んだ。
 温かい感触に包まれ、息が止まりそうになる。


「不安なことがあったら、いつでも連絡して? 僕で良かったら話を聞くよ」
「……ありがとうございます」


 慈しむような目差しを受け、こんな私を心配してくれている、そのことに胸の奥が熱くなるのを感じた。